お葬式の準備
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遺贈とは
故人が特定の人へ遺産を渡す方法のひとつに、遺贈(いぞう)があります。遺産を渡す方法といえば相続という言葉が思い浮かびますが、遺贈は相続とどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、遺贈の意味や特徴などについてご紹介します。
遺贈の意味と種類
遺贈とは、遺言書によって被相続人が遺贈を受ける人へ遺産を渡すことをいいます。相続の場合に受け継げるのは相続人ですが、遺贈の場合は相続人以外の人へ渡すことができるのが大きな違いです。また。相続人で均等に分けるのではなく特定の相続人に特別な遺産を渡すことも遺贈となります。
そのため、法定相続人ではない相手に財産を残したい場合や、相続人の中でも特別な相手のみに特定の財産を残したい場合は、この「遺贈」という手段を取る必要があります。
遺贈は、「包括遺贈」「特定遺贈」「負担付遺贈」3つに分けられます。
遺贈を受ける人と遺贈を行う人
●遺贈を受けられる人の条件
遺贈を受ける人のことを受遺者といい、受遺者は相続が発生した時点で生存している人に限られます。その際にまだ胎児であった場合は生まれたものとみなされ、受遺者の権利が与えられますが、死亡して生まれてきた場合は適用されません。
また、以下のような場合は、遺贈の効力は発生しません。
●受遺者が遺言者より先に死亡してしまった場合
●受遺者が被相続人に対して刑に処されるような行為をした場合
●受遺者が脅迫などによって遺言者に遺言書を書かせたり、遺言書を偽造したりした場合
遺贈の効力が発生しない場合の条件については、民法第891条(相続人の欠格事由)に詳細が定められています。
●遺贈を行う人
被相続人が死亡してしまっているため、実際に遺贈を行う人は生存している人となります。遺贈を行う人のことを遺贈義務者といい、原則として相続人が履行することが民法第896条によって決められています。
遺贈の種類
●包括遺贈
包括遺贈は、遺産のうち一定の割合を指定して遺贈される方法のことをいいます。たとえば、財産の半分を与える、財産の10分の1を与える、という形です。この際に言う遺産とは、プラスの遺産だけでなくマイナスの遺産も含まれます。借金があった場合も遺言書に添った割合を与えられることになりますので、デメリットとなることもあります。
包括遺贈の場合、受遺者は相続人と同じ権利義務を持つため、遺産分割協議に参加することができます。協議に参加できれば、遺産の構成変化に対応することもできるので、遺贈をより多く受けられる可能性もあります。また、遺贈があった場合は相続と同様に、遺贈があることを知った時点から3ケ月以内であれば放棄や限定承認できます。
●特定遺贈
特定遺贈の場合は、建物や土地などの特定の財産を指定して与える方法のことです。指定されたもののみをもらえるので、包括遺贈のように借金まで与えられることがないという特徴があります。
もし遺贈を受けたくない場合は、放棄をすることも可能です。包括遺贈のように期限は決められていないため、いつでも放棄できます。
包括遺贈と特定遺贈の違いについては、以下の表をご参考ください。
包括遺贈 | 特定遺贈 | |
特徴 | 負債を含む財産のうち特定の割合を遺贈する。 | 負債を含まない特定の財産を遺贈する。 |
メリット | 相続人と一緒に遺産分割協議に参加でき、遺産の割合を協議できる。 | 負債を引き継ぐ可能性はない。 |
デメリット | 負債も引き継ぐ可能性がでる。 | 遺贈を受けられるのは指定されたものに限られ、財産の割合を協議できる権利はない。 |
遺贈の放棄 | 遺贈があることを知ってから3ケ月以内なら放棄や限定承認が可能 | いつでも放棄が可能 |
●負担付遺贈
負担付遺贈とは、指定の遺産を渡す代わりに、一定の負担や義務を課して遺贈する方法です。例えば、「財産の一部を渡す代わりに、残された妻の介護をすること」「家と土地をあげる代わりに子供の面倒を見ること」などです。負担付遺贈を受けた場合、その遺贈を受け取りたくない場合は、放棄することができます。負担付遺贈で遺贈する人にお願いごとがある場合は、遺贈を受ける人と予め相談をし、内容に納得してもらうことが大切です。
いずれの場合も、遺贈を行う為には詳細を遺言書などの公的な文書に残す必要があります。まずは民法をしっかり確認し、不安なことがある場合は司法書士や弁護士などに相談してみるのも一つの手かもしれません。