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65歳以上の6人に1人が認知症患者

認知症とは、様々な原因によって脳の認知機能が低下し、今まで出来ていたことが出来なくなったり、記憶を留めておくことが出来なくなる状態を言います。
人口の高齢化に伴って認知症を抱える高齢者も年々増加しており、内閣府の「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」によると、2020年度の65歳以上の高齢者の認知症有病率は16.7%となっており、約602万人が認知症を患っていることを示しています。

また、2060年には850万人が認知症になるとも予測しています。

https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/zenbun/pdf/1s2s_03.pdf

認知症にはいくつかタイプがありますが、もの忘れが激しくなる「アルツハイマー型認知症」が最も多いと言われています。認知症がこれだけ増加していることを考えると、自分自身や家族がいずれ認知症になる可能性は決して低くはありません。

相続人が認知症の場合、遺産分割協議ができない

このように、65歳を過ぎれば誰でも患う可能性のある認知症ですが、相続においても大きな問題になります。

相続が発生した際、多くの場合相続人は複数存在します。例えば世帯主である父親が亡くなった場合は、その妻と子供が相続人になります。子供が複数人いれば、その全員が相続人になります。
そのため、遺産をどのように分割するか協議する「遺産分割協議」によって相続を行う必要があります。これは全員の参加と合意がなければ成立しません。

例えば長男が勝手に相続の配分を決める、母親がいない場所で兄弟だけで配分を決めるなどといった遺産の分割には効力がないのです。

しかし相続人の一人が認知症を患っていて判断能力がないと、協議に参加していたとしても無効になってしまいます。通常被相続人が亡くなると、遺産分割協議が終わるまでの間全ての財産が凍結されるため、相続そのものが凍結されてしまうことになるのです。

そのような事態を避けるためにも、相続人が認知症を発生する前に準備をしておく必要があります。いくつか対応策がありますので、ご紹介します。

 

成年後見人制度を利用する

方法の一つとして、「成年後見人制度」の利用があります。

成年後見人とは、判断力が不十分な人に変わって財産の管理や相続の手続きを行う人のことを言います。

成年後見人は、判断能力が不十分な本人に代わって預貯金の管理や解約、不動産の処分、保険金受取、相続手続きなどを行うことができます。
相続人の一人が認知症と診断された場合には、成年後見人が本人の代わりに遺産分割協議を行うことが可能になります。

但し、成年後見人の選出にはいくつか手続きがあり、まずは裁判所に選出の申し立てを行わなければなりません。裁判所の審判によっては候補者が選出されず、弁護士や司法書士が専任されることもあります。公平な視点で成年後見人が選出されるというメリットがある反面、成年後見人には毎月報酬を支払わなければならなくなるため、候補者以外の人間が選出されたり、報酬支払いなどの経済面ではデメリットのある方法と言えます。

 

家族信託で備える

もう一つの方法に、「家族信託」があります。家族信託とは、財産から利益を受ける人と、財産を管理運用する人に分けることができる仕組みです。

例えば父親がアパートを経営している場合、家賃収入は父親へ、管理運用は子へと権利を分けることができます。父親が亡くなる前に家族信託にしておくと、万一父親の死後に相続人となる母親が認知症になったとしても、その管理運用と処分は子が行うため、分割協議に母親が参加できなくても遺産分割が可能になるのです。

裁判所に申し立てが必要な成年後見人制度に比べると家族内で管理者を決められるため、ハードルは低いと言えるでしょう。

また管理者は広い権限を与えられるため、アパートの修繕など費用がかかる判断においても実行が可能になります。一方で、財産管理において相続人が大きな裁量を持つことになるため、家族間の信頼関係は必須と言えるでしょう。

将来を見越した早めの供えを

成年後見人制度も、家族信託制度も相続においてはメリットもデメリットもあるため、家族間でよく話し合って対策を考える必要があります。一番注意しなければならないのは、いずれも当事者が認知症になってからでは契約できない点です。契約と言う行為は、判断能力がない人間には行うことができないからです。

但し、認知症と診断された人の全てが行えないわけではなく、軽度であれば契約できるケースがあります。相続財産の凍結を防ぐためにも、早めの備えが重要です。

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