お葬式の準備
お葬式の準備
お葬式についての遺言があったらどうする?
遺言は、自分の死後のために相続や財産などに関する内容を書き記したもので、法的に強制力を持つものです。しかし遺言に自分のお葬式の内容が指示されていて、それが実現不可能だった場合はどうでしょうか。
ここでは、故人がお葬式についての遺言を残した場合についてご紹介します。
遺言とは
遺言とは、故人(被相続人)が書面で自分の意思を証明したもののことを言います。自分の死後のために、相続や財産などに関する内容を書き記します。遺品の分け方や親族への感謝の言葉などを記すエンディングノートや、自分の人生を書き記した自分史などと違い、遺言には法的な力があり、最も優先される文書です。
遺言がその効力を発揮するのは本人が亡くなったあとのため、その内容をめぐってトラブルが起きることも少なくありません。
遺言事項と付言事項
このような性質から、遺言にはその効力が保障される内容と、保障されない内容があります。それが「遺言事項」と「付言事項」です。
遺言は被相続人に向けて法律的な効力を持ちますが、遺言に記載されたすべてが法的な効力を持つわけではありません。
その区分けが、「遺言事項(法定遺言事項)」と「付言事項」として、示されているのです。
お葬式を行う人が指定されていた場合
遺言事項の中には、「祭祀主催者の指定」が含まれています。祭祀とは祖先や神々を祀る行事などを指したもので、お葬式は祭祀にあたります。
祭祀にはお葬式の施行の他に仏壇やお墓の継承などが含まれていますので、通常は跡継ぎになる人間が引き継ぐものですが、別の人間を指定することもできます。
遺言で祭祀主催者が指定されていたら、指定された人間がお葬式を執り行わなければいけないということになります。
配偶者や長子が喪主を務めるのが一般的ではありますが、別の人間が遺言で指定された場合は、それに従う必要があるという事です。
逆に、特に祭祀主催者が指定されていない場合は、遺族が話し合って決める必要があります。話合いを行っても決まらない場合は、家庭裁判所が祭祀主催者を決めることもあります。
お葬式の内容が指定されていた場合
では、お葬式の内容についてはどうでしょうか。主催者については遺言事項に含まれていますが、それ以外の内容については遺言事項ではなく、付言事項になります。
そのためたとえ遺言に記されていたとしても、法的な効力はありません。
●会場の指定がある
例えば、どの葬儀場や寺院でお葬式を行うといった指定があった場合は付言事項になりますので、法的な効力はありません。もちろん可能であれば指定の会場でお葬式を行うに越したことはありませんが、会場や寺院の都合で日程が合わなかったり、祭祀主催者の居住地から遠く離れた場所が指定されている場合には、現実に合わせた場所でお葬式を行って問題ありません。
●葬具が指定されている
葬具も付言事項です。祭壇や棺、骨壺などが細かく指定されていた場合、手に入るものであれば問題ありませんが、高額であったり、取り寄せるのに時間を要したりするものが記載されていた場合は、必ず従わなければいけないということはありません。
●お葬式に呼んで欲しい人、呼んでほしくない人の記載がある
これも付言事項になります。故人の希望はできるだけ叶えてあげたいところではありますが、「遠方で高齢のあの人に声をかけて良いものか」「あの人だけ呼ばないわけにはいかない」などといった遺族側の事情もあるでしょう。
これも可能な範囲で対応するというスタンスで問題ないでしょう。
さて、このように遺言には遺言事項と付言事項がありますので、遺言書に記載された全てに従わなくてはいけないという事はありません。
お葬式に関して法的な効力がある遺言は、祭祀主催者のみになり、その他に関しては「故人の希望」という範疇になります。
内容によっては遺族に大きな負担となる場合もありますので、よく考えて対応する必要があります。しかし、せっかく故人が遺してくれた遺言ですから、できる範囲でかなえてあげたいところではあります。もし遺言に実行が困難なことが含まれていた場合は、その内容ではなく意図を汲み取って、できる範囲で希望を叶えてあげるというスタンスでいると良いのではないでしょうか。
遺言を残す際にも、遺族の混乱を招くことにならないよう、付言事項に記載する内容の意図をしっかりと書き記しておくと良いでしょう。