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「祭祀」に含まれるもの

まず始めに、「祭祀」についてご紹介しましょう。そもそもは祭りや祭典など、神仏や祖先を祀る行為全般を指す言葉ですが、祭祀継承者が受け継ぐのは「祭祀財産」と言って、祭祀そのものの他に祭祀を行うための道具全般を指しています。

祭祀財産は相続とは分けて考えられ、仮にそのものに金銭価値があったとしても相続税の対象にはならないという特徴があります。

仏壇や位牌、仏像、墓、家系図などがこれにあたり、民法では祭祀財産を「系譜」「祭具」「墳墓」の三種類に分けて指定しています。

系譜

家系図など。掛け軸や巻物の形が多い

祭具

位牌、仏壇、仏像、神棚、神具、仏具など祭祀に使用する道具

墳墓

墓碑、棺、霊屋、墓地など

 

遺産は相続人の共同財産として扱われ、場合によっては分割して相続されるものです。しかし、相続人が複数名いたとして、仏壇や位牌を人数分に分割して相続することは現実的に不可能です。

 

このように祭祀財産はその性質から分割が難しいため、共同財産とは切り離して考えられます。

明治民法では、家督を継承するものが単独で祭祀を相続することが法律で定められていました。家督継承者=長男が単独で相続することが前提であり、死亡するまでは家督を守ることが義務付けられていたのです。しかし、昭和22年に家督相続が新民法によって廃止されてからは、主として祖先を祭る役割りを担う相続人が継承することになっています。

 

祭祀継承者の選び方

祭祀継承者の選び方については、民法897条に規定されています。

 

民法第897条 祭祀に関する権利の継承

一項

系譜、祭具及び墳墓の所有者は、前条の規定に関わらず、慣習に従って祖先の祭祀を主催すべき物が継承する。

ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主催すべき者があるときは、その者が継承する。

二項

前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を継承すべき物は、家庭裁判所が定める。

 

このように被相続人が遺言などで祭祀継承者を指定した場合は、指定された相続人が祭祀を継承します。これには、必ずしも親族でなければならないという決まりはありません。

特に指定が無かった場合は「慣習に従って」、祭祀を主催すべきものが継承するとされています。

この「慣習」が何かは定かではありませんが、おそらく旧民法で定められていた長男、または長子、というのが一般的ではないでしょうか。

いずれの方法でも決まらない場合は、家庭裁判所が審判によって祭祀継承者を決定します。

 

祭祀継承者は辞退できるのか

さて、祭祀財産は相続とは切り離して考えられるため、相続税の対象にはなりません。しかし継承することで、負担を強いられる場合も少なくありません。例えば現住所とはかけ離れた場所にある先祖代々の墓地を継承した場合、管理には時間やコストが発生します。

住まいに置くには大きすぎる仏壇なども同様です。

小ぶりな仏壇に買い替えて先祖を祀るとしても、古い仏壇の閉眼供養や廃棄処理など、思いがけない費用負担が発生することもあります。

またお葬式や法要など、祭祀を行うに当たっては金銭的負担が生じることもありますので、中には継承したくないと考える人もいるでしょう。

こういった場合、祭祀の継承を辞退することはできるのかと言うと、遺言事項によって祭祀継承者として指定された場合や、家庭裁判所の審判によって決められ場合は、辞退や権利の放棄ができないのが現状です。

財産の相続は手続きによって放棄することができるので、ここが相続と祭祀継承の大きな違いと言えるでしょう。つまり、相続を放棄したとしても、祭祀は継承しなけれなならないというケースもあり得るという事です。

但し、祭祀を実行しない場合の罰則があるわけではありません。

祭祀継承者に指定されたら

生活様式や価値観が様変わりする中、旧来の祭祀財産は継承者にとっては負担になるケースの方が多いかもしれません。

仏壇を継ぐ時の注意点」でもご紹介していますが、少子化の進む昨今、長男長女同士の結婚も珍しくなく、お互いに祭祀を継承するケースも少なからずあるでしょう。
こういった場合に備えて、祭祀継承者は遺産の分割の際に祭祀の管理分を含めて多めに相続するなど、負担に見合った分割を考えるのも一つの手です。

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