お葬式のマナー
お葬式は、お通夜よりも多くの会葬者が集まります。面識のない人も多く、またお通夜よりさらに厳粛な空気の中でとり行われますので、マナーには十分に気をつけましょう。
仏式のお葬式の流れ
お葬式は、宗教的な儀式である「葬儀式」と、社会的な故人とのお別れの会である「告別式」で構成されています。本来は別々に行われていましたが、現在では「葬儀式」の後に続けて「告別式」を行う場合が一般的なようです。「葬儀式」と「告別式」の開始時間がわかれているときに、故人との関係性が友人・知人程度であれば「葬儀式」の間は待機していて「告別式」から出席するのが良いでしょう。また、お通夜は自分の焼香が終わったら、通夜振る舞いに少し顔を出して退出するのに対して、お葬式は開始から最後まで残っているのが基本です。お葬式の流れは宗派により若干の違いはありますが、一般的なお葬式の流れに沿って説明します。
●受付をすませる
お通夜は式が始まっていても読経が終わるまでに受付を済ませれば良いですが、お葬式の開始時間は厳守です。早めに行って受付をすませましょう。
会場は斎場でとり行われる場合が多いので、斎場の係員の誘導に従って受付をしましょう。故人との関係により受付がわかれているケースがありますので、自分がどこに該当するか気をつけましょう。
自分の順番になったら、受付係の人に簡単なお悔やみの言葉を述べてから一礼し、袱紗(ふくさ)に包んだ不祝儀袋を取り出して、表書きが相手に読めるように両手で受付係に渡しましょう。なお、むき出しのままの不祝儀袋を取り出すことは失礼とされています。袱紗がない場合は、白いハンカチや風呂敷に包むようにしましょう。お香典を渡した後は芳名帳に住所と名前を書き、最後にもう一度一礼します。前日のお通夜にも会葬していて、お香典をすでに渡してある場合は、その旨を受付係に伝えて記帳だけすませましょう。お斎(精進上げ)の席に誘われる場合には、受付でお斎の案内券を渡されることが多いようです。
●会場に入り式に参列する
会場に自分の席次が決められている場合は、それに従いますが、決まっていない場合は前から順につめて着席します。式の一般的な流れは次のとおりです。
僧侶の入場
開式の辞
→ 全員で合掌・礼拝
→ 読経
→ 弔辞・弔電披露
→ 読経
→ 喪主焼香
→ 遺族、親族焼香
→ 会葬者焼香
→ 読経終了
→ 全員で合掌・礼拝
→ 僧侶退場
→ 喪主謝辞
→ 閉式の辞
ーここまでが「葬儀式」の内容となり続けて「告別式」へと進みます。ー
ー告別式のあとの以下の流れになります。ー
→ 故人の子や孫から感謝の言葉(※故人に対し)
→ 献花の儀
●焼香の作法
司会から焼香を始める案内があります。まずは喪主から、続けて遺族、親族そして一般の会葬者の順番に焼香を行います。焼香のタイミングは係員の案内がありますので、それに従って順番に焼香をします。一般的な焼香の作法はお通夜と同様ですが、ここでもご紹介しておきます。
●遺族・親族に一礼
祭壇に一礼した後に合掌
右手の親指、人差し指、中指の三本で抹香を少量つまみ目の高さまで持ち上げる
目を閉じ故人の冥福を祈り
指をこすりながら抹香を香炉に落とす(回数は宗派により異なる)
その間数珠は左手にかけておく
焼香を済ませたら再度合掌
祭壇に一礼し、遺族、親族の前を順に一礼しながら退場
なお退場する際には遺族に次のような簡潔なお悔やみの言葉を伝えましょう。
「この度は誠にご愁傷さまでした」
「○○さんには良くしていただきました。本当に残念です」
●出棺
告別式が終わると、祭壇からお棺をおろして故人と最後の別れを行います。告別式が終了した後もできる限り残って、故人を最後まで見送ることが礼にかないます。お棺には遺族や参列者が遺体の周りに花や故人の持ち物などを飾りお棺を閉じます。
お棺はかなり重量がありますので、力のある男性数人で持ち上げて霊柩車に運びます。男性の場合、葬儀場のスタッフに手伝いを促されたら、積極的に手伝うのが礼儀です。
霊柩車が走りだしたら、合掌して故人の冥福を祈りながら見送りましょう。この後、霊柩車は火葬場に向かいます。
●お斎(精進上げ)
火葬が済んだ後に、お斎(精進上げ)という会食の席が設けられます。遺族、親族を中心に故人とごく親しい人で行われるものですが、通夜振る舞い同様に故人を供養するという意味をもつものですから、誘いを受けたらできるだけ出席するようにしましょう。冒頭のみ出席をして、料理に箸をつけたり、飲み物に一口は口をつけたりするだけでも十分礼にかないます。
途中退席するときは、喪主・遺族に挨拶をして退出するようにしましょう。通夜振る舞い同様に宴会ではありませんので、大声での会話は慎むべきですが、故人の思い出話しに花を咲かせたうえでの(小さな)笑い声は失礼にはならないでしょう。お通夜からお斎まで、遺族、なかでも喪主はとくに疲れが出るころです。「お力を落とさずに」「お力になれることは何でも言ってください」などと励ましの言葉をかけるように心がけましょう。
神式のお葬式
神式では葬儀式・告別式に相当するのは「葬場祭」といいます。会場は斎場の場合が多く、受付から会場への入場までは仏式と変わりません。葬場祭の式が始まる前に「手水(ちょうず)の儀」と呼ばれる、手桶から柄杓で水を汲み、左手、右手の順に水をかけて、次に左手で水を受けてその水で口をすすぎ、もう一度水を左手にかけるという儀式を行います。これは身を清めるという意味がありますが、現在ほとんどの葬儀場で、この「手水の儀」は省略されています。また仏式の焼香にあたるのは、玉串奉奠(たまぐしほうてん)と呼ばれる行為です。榊の枝に白い紙片をつけたものを祭壇に捧げて故人の霊が安らかであることを祈ります。葬場祭の一般的な流れは次のとおりです。
手水の儀の後に着席
→ 祭主(仏式の僧侶にあたる)入場
→ 開式の辞
→ 修祓の儀(斎主によるお祓い清めの儀式。参列者全員起立して頭を下げる)
→ 祭主による祝詞、誄詞奏上(お祈り)
→ 祭主拝礼
→ 弔辞・弔電披露
→ 玉串奉奠(喪主、遺族、親族、一般の順)
→ 祭主退出
→ 喪主挨拶
→ 閉式の辞
●玉串奉奠の作法
焼香と同じく通夜の作法と同様ですが、ここでもご紹介します。
祭主に一礼し、玉串を右手で根本をつかみ左手で枝をささえるようにして受け取る
受け取った玉串を目の高さまでおしいだき、根本が手前にくるように90度回転させる
左手を根本に右手を中ほどにと持ち手を変え
180度水平に回して根本を祭壇に向けて、玉串案と呼ばれる台に置く
偲び手(音を立てないで拍手)で、二礼二拍手一礼を行う
遺族に一礼して退出する
神式のお葬式でも、お斎(精進上げ)に相当する「直会(なおらい)」が設けられます。
キリスト教式のお葬式
キリスト教式のお葬式は、教会または斎場で行います。受付から会場への入場は仏式と大きな違いはありません。流れは大きくカトリックとプロテスタントにより異なります。
カトリック
神父入場
→ 開式の辞
→ 葬儀ミサ
→ 聖歌斉唱(これより告別式)
→ 弔辞・弔電披露
→ 献花
→ 喪主挨拶
→ 閉式の辞
プロテスタント
牧師、お棺、喪主、遺族入場
→ 牧師聖書朗読
→ 賛美歌斉唱
→ 牧師説教
→ 参加者全員で祈祷
→ 賛美歌斉唱
→ 献花
→ 喪主挨拶
●献花の作法
焼香の代わりは献花です。通夜と同じく、白い菊やカーネーションを捧げます。献花の作法は次のとおりです。
祭壇に進み、係の人から花が右手にくるように受け取る
一礼し根本が祭壇に向くように花を回す
花を献花台に置く
遺族、神父・牧師に一礼して退出
キリスト教式でもお葬式終了後に、簡単な会食を設けることが一般的になっているようです。