お葬式のマナー
お葬式のマナー
施主とは
お葬式の時に、喪主(もしゅ)のほかに施主(せしゅ)という言葉を耳にします。
役割についてはすでに喪主(施主)がお葬式ですべきことでご紹介していますので、ここでは喪主と施主はそれぞれどのような意味をもち、どのように違うのかを考えてみましょう。
喪主と施主
喪主は「喪に服する主」という意味で、お葬式を主宰する遺族の代表のことをいいます。施主は「お布施をする主」という意味で、お葬式の費用を負担し運営全般をとりしきる者のことをいいます。旧民法時代には「家督相続制度」があり、嫡出長男が祭祀と財産のすべてを相続していましたので、祭祀の主である喪主と費用を負担する施主は基本的には同一でした。戦後の民法改正により「法定相続」となりましたが、祭祀権という考え方自体現代に馴染みませんので、旧民法時代同様に財産相続の筆頭者が喪主であり施主である場合が一般的です。喪主と施主が異なるのは次のようなケースが考えられます。
(1)喪主は故人の配偶者がつとめ、お葬式の費用は子どもが負担するために、子どもの代表者が施主になる場合。
(2)社葬で、費用負担を会社がもつために施主となる場合。
喪主と施主が別々の場合以外は、施主ではなく喪主と呼ぶのが一般的です。なお、喪主という呼び名は、喪に服している期間だけです。忌明けの法要からは喪主ではなくなり施主のみとなるため、呼び名も変わります。
喪主(施主)には誰がなる
旧民法時代は、家督を相続する男性が喪主を務めるしきたりだったので、男子が誕生すると「位牌持ち(=喪主)ができた」と言われていました。家督相続制度がなくなった現代でも出棺時には喪主が位牌を持つという慣習は残っています。現代では喪主を誰が務めるのかは遺族間の協議によって決まります。多くの場合は配偶者あるいは長男ですが、複数人であっても構いませんので、兄弟全員で務めたり、配偶者と子どもが共同で務めることもあるようです。また、子どもが亡くなった場合には、以前は「逆縁」ということで親は喪主にならない、という慣習がありましたが、現在では親が喪主を務めるのが一般的になってきています。
喪主(施主)とお葬式の実務
高度成長期を迎える前の日本では、冠婚葬祭は地域の共同体が中心になってとり行われていました。お葬式に関しては、地域によりその呼び名は異なりますが「葬式組」「講中」「クミ」「世話役」などと呼ばれる地域の共同体がすべてを運営していました。喪主の役割は遺族の代表として弔問を受ける、施主の役割は費用を負担する、それ以外は共同体が担うため、喪主(施主)を含めた遺族はお葬式の運営に対して一切口を挟むことができないという地域もあったということです。高度成長期の日本で、都市化と住民の流動化が進む中で地域の共同体は崩壊していきます。お葬式の実務の担い手がいなくなったことにより、それまではある意味で「ひな壇」に座っていれば良いだけだった喪主(施主)が実務全般に目を通さなくてはいけなくなった、ということが言えるでしょう。そして共同体時代には、大人数で賄うことができた実務を、一人ないし少人数の喪主や遺族で担わなければいけなくなったことにより、お葬式の実務を提供するサービスの重要性が高くなっているのが現代である、ということが言えるのかもしれません。