神式のお香典とは？玉串料の意味と相場

神式のお香典とは？仏式との違い

日本のお葬式といえば、多くの人が仏式を思い浮かべるかもしれません。実際、国内では仏教式のお葬式が9割を超えると言われますが、神道に基づいた神式のお葬式も少ないながら執り行われています。神式でも仏式で用いられる「香典」と同じように、お葬式や法要の場で金銭を包んで遺族に渡す風習がありますが、これを「玉串料（たまぐしりょう）」と呼びます。

仏式での香典は故人の冥福を祈るためのものとされますが、神式の場合は、故人の御霊を慰め、神に近づく過程を見守るという神道の考え方に基づいています。そのため、故人は死後すぐに仏になると考える仏教とは異なり、神道では故人は一定期間「御霊（みたま）」として存在し、やがて守り神へと昇華していくとされています。この違いが、香典と玉串料という呼び分けに表れています。

また、仏式では数珠を持参するのが一般的ですが、神式では数珠を使用しません。焼香の代わりに、玉串（榊の枝に紙垂をつけたもの）を神前に捧げます。とはいえ、参列者が玉串を持参することはなく、代わりに金銭を包んで「玉串料」として渡すのが一般的な形式となっています。

玉串料の意味

玉串料とは、神道のお葬式や祭礼で故人の御霊に対して捧げられる金銭のことを指します。この言葉は「玉串（たまぐし）」と「料（りょう）」から成っており、もともと神前に供える榊（さかき）の枝を指す「玉串」に由来しています。榊には神霊が宿るとされ、紙垂（しで）や木綿（ゆう）をつけて神に祈りを捧げるための重要な神具です。

古来より神道の儀式では、この玉串を神前に捧げて礼拝することが基本でしたが、現代では一般の参列者が玉串を用意するのは現実的ではありません。そこで、玉串の代わりとして金銭を包んで渡す形が取られるようになり、これを「玉串料」と呼ぶようになりました。

なお、玉串料はお葬式や通夜といった弔事だけでなく、地鎮祭や結婚式、お宮参り、七五三など、神社に関わる様々な儀式においても用いられます。用途に応じて「初穂料」や「祈祷料」と呼ばれることもありますが、意味としては神様への感謝や祈願の気持ちを込めて金銭を奉納する点で共通しています。

また、「玉串料」と「御玉串料（おたまぐしりょう）」は表現の違いに過ぎず、どちらも意味は同じです。のし袋の表書きでは「御玉串料」と記載するのが一般的です。

玉串料の相場

玉串料の金額は、仏式の香典と同様に、故人との関係性や自分の年齢、社会的立場によって決められます。明確な決まりはありませんが、一般的には以下のような相場が参考になります。

●両親

最も高額となるのは両親（実親・義親とも）の場合で、相場は3万円〜10万円程度が目安です。

●兄弟姉妹、祖父母、叔父叔母

兄弟姉妹（義理含む）に対しては3万円〜5万円、祖父母や叔父叔母に対しては1万円〜3万円程度が一般的です。親戚関係でも距離がある場合や付き合いが少ない場合には、5,000円〜1万円程度にとどめるケースもあります。

●会社関係、知人など

また、会社の上司・同僚・部下や友人、近隣住民など、親族以外の方の場合には3,000円〜5,000円ほどが相場とされています。関係が深かった場合や恩義を感じている相手であれば、もう少し金額を上乗せすることもあるでしょう。

年齢や立場によっても相場は変動します。若い世代は無理のない範囲で包むことが一般的であり、30代以降になると若い世代よりも多めに包むのがマナーです。さらに故人との付き合いが深かった場合には、立場の相場よりも多めに包むと良いでしょう。

玉串料の金額には一定の目安があるものの、最終的には自分の気持ちと経済状況に応じて判断するようにしましょう。

玉串料の包み方

玉串料を包む際には、不祝儀袋（香典袋）を使用しますが、その選び方や書き方にはいくつかのポイントがあります。まず袋の種類ですが、神式では蓮の花や十字架といった仏教やキリスト教を連想させるデザインの袋は避けるのがマナーです。無地の袋や、白無地に黒白あるいは双銀の水引がついたものを選ぶとよいでしょう。

包む金額によって袋のグレードも変えるのが一般的です。3,000円〜5,000円程度であれば、水引が印刷された簡易な袋でも構いません。5,000円〜3万円程度を包む場合は、白黒または双銀の本物の水引が付いた袋を使用します。さらに高額（3万円〜10万円以上）となる場合は、大判で上質な和紙が使われた「大金封」と呼ばれる封筒を選ぶのが適切です。

表書きには「御玉串料」「御霊前」「御神前」などの言葉を用います。通夜やお葬式など、故人がまだ神として祀られていない期間には「御霊前」、一周忌以降の式年祭などには「御神前」が適しているとされています。表書きは袋の中央上部に書き、自分の名前をその下に記載します。

中包みには金額を記入しますが、ここで使う数字は改ざん防止のために「金壱萬圓也」「金参萬円也」といった大字（だいじ）を用います。また、中包みの裏には左下に自分の住所と氏名を記載します。

お札を入れる際は、新札を避けるのが一般的です。これは「突然の訃報に備えていたように見えないようにする」という意味が込められています。お札の向きは、表側（肖像画のある面）を中包みの裏に向けて、肖像画が下にくるように入れます。

筆記具についても、仏式と同様に薄墨の筆ペンを使用するのが礼儀とされていますが、筆でうまく書けない場合には、黒インクの細字ペンでも問題ありません。

神式の葬儀では、仏式と異なる作法や用語がありますが、基本的な礼儀の心は共通しています。神式ならではのしきたりを理解し、表書きや包み方、金額の目安を把握しておくと、もしもの際にも慌てずに済みます。

仏式やキリスト教式のお香典のマナーについては、お香典の相場とマナーでご紹介していますので参考にしてみて下さい。