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暗号資産の相続税は高い?相続に備えるためには
暗号資産は目に見えない「デジタル遺産」として、相続の際に見落とされやすい財産のひとつです。しかし、その価値は法定通貨や不動産と同様に相続税の対象となり、適切な管理と準備が欠かせません。本記事では、暗号資産相続に伴う課税や注意点、事前にすべき対策について詳しくご紹介します。
暗号資産は相続の対象になる
暗号資産は巷では仮想通貨とも言われますが、正式な呼称は「暗号資産」になります。インターネット上で取引できる財産的価値として、日本でも法的に認められた資産のひとつです。そのため、法定通貨や不動産、有価証券などと同様に、相続財産として取り扱われます。代表的な暗号資産には、ビットコインやイーサリアム、リップルなどがあり、これらの資産は被相続人が亡くなった時点で、その時価に基づいて評価され、相続財産に加算されます。
暗号資産は「デジタル遺産」とも呼ばれ、通帳や書類が存在しないため、家族がその存在に気づかないこともあります。特に、被相続人が取引所を通じて取引していた場合、どのサービスを利用していたのか、本人しか知らないケースも少なくありません。このため、暗号資産が相続財産に含まれていることを家族が把握できないリスクがあります。
また、暗号資産の保管方法も多様で、取引所の口座だけでなく、ハードウェアウォレットやスマートフォンアプリに保存されていることもあります。アクセスに必要なパスワードや秘密鍵が不明だと、相続手続きを進めるのが困難になるため、事前に情報を整理しておくことが重要です。こうした点からも、暗号資産は相続の対象となるだけでなく、他の資産よりも注意深く管理する必要があります。
暗号資産の相続税率
暗号資産を相続すると、その評価額に応じて相続税が課税されます。評価は、相続開始日(被相続人が亡くなった日)の時価で行われ、取引所が公表している価格が基準になります。つまり、価格変動の大きい暗号資産においては、評価額も変動が激しくなる傾向があります。
相続税の税率は、相続人ごとの法定相続分に応じた取得額に基づき、10%から最高55%までの累進課税となります。例えば、相続財産が6億円を超える場合、その超過部分に対しては55%の相続税がかかります。さらに、相続人がその暗号資産を売却した際には、所得税と住民税も発生します。暗号資産の売却益は「雑所得」として総合課税されるため、他の所得と合算され、所得が多い人ほど税率が上がる仕組みです。
このように、相続税と所得税・住民税を合わせると、場合によっては100%を超える税率となることもあり得ます。例えば、ビットコインを10年前に安価で購入し、相続時に数億円の価値となっていた場合、相続人がそのまま売却すれば、当時の取得価格との差額が課税対象となり、高額の税金が発生します。
こうした事例では、相続税を納めるために暗号資産を売却する必要が生じ、結果として相続した資産の多くを税金に充てなければならないケースも出てきます。暗号資産特有の価格変動と税制の仕組みを理解しておくことが、相続時の混乱を避けるために求められます。
暗号資産を相続するための準備
暗号資産の相続は、事前の準備が非常に重要です。なぜなら、暗号資産は紙の証券や通帳のように目に見える形では存在しないため、相続人がその存在や保有場所、保有量を把握しにくいからです。そのため、被相続人となる可能性のある人が、生前に保有状況を明確にしておくことが求められます。
具体的には、以下のような準備が有効です。まず、利用している暗号資産取引所やウォレットの情報、アカウントID、保有している暗号資産の種類と数量などを一覧にして記録します。これに加えて、パスワードや秘密鍵の管理方法を明記し、それらの情報を安全な場所(例:銀行の貸金庫など)に保管することが勧められます。
また、家族が暗号資産の知識を持っていない場合、相続時に大きな混乱が生じる可能性があります。そのため、暗号資産を保有していること自体を家族に伝えておくことも大切です。特に複数の取引所を利用している場合は、どの取引所にどれだけ保有しているかを明記しておくことで、相続人が迷わずに手続きに移ることができます。
さらに、資産額が大きくなる場合は、生前贈与の活用も一つの方法です。年間110万円までの贈与は非課税となるため、複数年に分けて子どもや孫に分配すれば、将来の相続税の負担を軽減することが可能です。暗号資産の特性と相続税制度を理解したうえで、計画的な資産移転を考えることが望まれます。
暗号資産を相続するための手続き
実際に相続が発生した場合、暗号資産の相続手続きはまず、被相続人が利用していた暗号資産取引所に連絡を取ることから始まります。取引所のサポート窓口に連絡をし、被相続人が亡くなったことを伝え、必要な書類の案内を受けます。各取引所では、相続手続きに関する専用ページを用意している場合もあります。
続いて、提出が求められる書類を準備します。一般的には、戸籍謄本、遺言書(ある場合)、相続人全員の同意書、印鑑証明書、身分証のコピーなどが必要となります。加えて、暗号資産の残高証明書を取得し、相続税申告に使用します。取引所によっては、これらの書類を郵送またはオンラインで提出する形式となっており、事前に確認しておくとスムーズです。
取引所が確認を終えると、被相続人のアカウントは凍結され、相続人の指定口座へ暗号資産を日本円換算で送金する対応が取られることが一般的です。つまり、暗号資産そのものを相続するのではなく、日本円に換えた額が相続される場合もあります。ただし、暗号資産でそのまま相続することが可能な場合もあり、各取引所の対応に左右されます。
もし取引所が海外にある場合や、秘密鍵などのアクセス情報が不明な場合は、相続手続きが非常に複雑になることがあります。このような事態に備えて、専門家である弁護士や税理士に相談することも有効です。特に税務面では、準確定申告や所得税の申告も必要となるため、対応を誤らないよう注意が必要です。
暗号資産は目に見えない資産であることから、相続の際には情報の整理と準備が他の財産以上に求められます。相続税率の高さや手続きの複雑さからも、早めに対応しておくことが望ましい分野です。家族に資産を円滑に引き継ぐためにも、生前の情報整理と税務対策が不可欠と言えるでしょう。