お葬式が終わったら
お葬式が終わったら
相続人が認知症の場合どうする?
人生100年時代と言われる今、亡くなる年齢が高くなるほど相続人の高齢化も進むことになります。その場合、相続人が認知症であるケースも十分に考えられます。
ここでは、相続人が認知症であった場合の問題点と対策についてご紹介します。
認知症とはどんな状態?
認知症とは様々な原因によって脳の神経細胞が破壊、または減少し、日常生活が正常に送れない状態を指します。
認知症と一言に言ってもその症状は様々です。記憶障害や見当障害、判断力の障害などの認知機能の低下から、うつ状態や幻覚・妄想を見る、徘徊する、極端な興奮状態になる等の行動や、心理状態に影響を及ぼすものもあります。
最も多いのは「アルツハイマー型認知症」と言われる症状で、直前の行動を忘れてしまう、覚えていたはずの物事を忘れてしまう、注意力が極端に低下すると言った状態を指します。
食事をしたのを忘れて催促したり、家族の名前や顔を忘れてしまうといった症状はこれにあたります。
発症の理由は様々ですが、多くは加齢とともに脳の機能が低下する過程で発症し、高齢者に多く見られます。若年で発症する場合もありますが、これは遺伝的要素が多いと言われています。
また、脳腫瘍や硬膜下血腫などの外的要因で発症する場合もあります。この場合は原因を取り除くことで改善が見込める可能性もありますが、多くは一度発症すると治療は困難と言われています。
家族に認知症がいた場合の問題点
このように正常な認知や判断が難しい人間が相続人になった場合、どのような問題が起こるかを考えてみましょう。
被相続人の死亡によって相続が発生した場合、多くのケースは複数の相続人が分割して相続することになります。相続人の範囲と法定相続分は以下の通りです。
●相続人の範囲
相続は、被相続人の配偶者が受けることが民法890条で定められています。原則的には法律上の婚姻関係にあるものが対象で、内縁は法定相続人とは見なされません。
配偶者以外はその子、孫、父母、兄弟姉妹の順に相続の権利が発生します。
●法定相続分
民法では相続する順番だけでなく法定相続分、つまり相続の割合についても定めています。
例えば配偶者と子供が二人いた場合を例に取ると、配偶者は相続財産の1/2を、子は残りの1/2を二人で分け合うことになります。
詳しくは「法定相続人と法定相続分」を参考にして下さい。
相続財産が全て現金であれば分割は簡単ですが、財産に不動産や土地、貴金属など分割が難しいものが含まれていた場合には相続人の間で「遺産分割協議」を行い、全員が納得する形で配分を行うことになります。
●遺産分割協議が行えない
この協議にあたって、認知症の相続人がいると協議や手続きの成立は難しくなります。認知症にかかると協議に必要な判断力が欠如してしまうためです。しかし、遺産分割協議は法定相続人全員で行うことが法律で定められています。そのため、認知症の相続人を除いて行われた遺産分割協議は無効になってしまい、全員が相続の手続きができないという事態になりかねません。
認知症の相続人には代理人を立てる
このような状態を避ける対策の一つとして、認知症の相続人に成年後見人を立てる方法があります。
民法第7条と8条で「成年被後見人及び成年後見人」について以下のように定められています。
(後見開始の審判)
第七条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
(成年被後見人及び成年後見人)
第八条 後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。
「精神上の障害」というと特別な病気のように感じますが、認知症や加齢によって十分な判断ができない状態も含まれます。
成年後見人は判断能力が十分でない人に変わって財産を管理するだけでなく、契約や手続きを行う代理人です。成年後見人を立てるときには家庭裁判所に選任の申し立てを行う必要があります。詳しくは「成年後見人とは」でご紹介していますので、参考にしてください。
遺言書を残しておく
被相続人が存命である場合は、遺言書を残すのも一つの手です。既に相続人に認知症が発症している場合は、認知症の相続人を省いた財産分与を遺言書に明記するようにします。
遺産分割にあたっては、法定相続分よりも遺言が優先して効力を持つため、遺産分割の協議の必要が無くなります。
遺言を残す際には、財産の記載に漏れがないように気をつけましょう。漏れがあると、その財産について遺産分割協議を行わなければならなくなり、せっかくの遺言書も効果を発揮することができません。
こういった事態を避けるためにも、「その他の財産」という項目を作成し、相続人を指定しておくと安心です。例えば自宅は長男に、株式は長女に相続させると指定した場合、その他の財産は全て長男に相続させる、または長男に分割を一任する、などといった記載をしておくと良いでしょう。