お葬式が終わったら
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グリーフケアとお葬式
みなさんは「グリーフケア」を知っていますか? グリーフ(GRIEF)とは「悲嘆」を意味する英語です。人間はパートナーや子ども、親兄弟、友だちなど、大切な人を亡くすと深い悲しみに襲われますが、やがては悲嘆を乗り越え、立ち直らなければなりません。その経過を見守り、支えることを「グリーフケア」といいます。今回はグリーフケアとお葬式の関連性について考えましょう。
大切な人を亡くしてから立ち直るまで
大切な人と死別して悲嘆に暮れるのはごく自然なことです。精神的かつ身体的に複雑で不安定な状態に陥り、いくつかのプロセスを経て乗り越えていくわけですが、どのくらいの時間を要するかは人によってさまざま。この悲嘆のプロセスを「グリーフワーク」といいます。
グリーフワークのプロセスは、3段階、5段階、12段階など、学者や専門家によって分け方・考え方が異なるようです。ここではわかりやすく、日本グリーフケア協会のホームページに記載されている4つの段階と代表的な反応を紹介しましょう。
1)ショック期
↓故人を想起し、恋しい・愛しいという思いに占拠される「思慕と空虚」
2)喪失期
↓人と違ってしまったような気後れ感覚に代表される「疎外感」
3)閉じこもり期
↓何もやる気が起きない、うつに酷似した「うつ的不調」
4)癒やし・再生期
自分を奮い立たせようとする「適応・対処の努力」
尚、グリーフワークのプロセスは、年齢や性別、故人との関係性などによって異なり、症状の有無や重度はさまざまです。
症状の例を紹介すると…
●精神面では、思慕のほか、感情の麻痺、怒り、恐怖に似た不安、孤独、罪悪感、無力感など。
●身体的には、睡眠障害、食欲障害、体力の低下、疲労感、めまい、動悸など。
さらに行動にも変化が現れ、ぼんやりしたり、突然涙が溢れだしたり、反対に活発に動きまわって仕事に精を出したり、など。
いかにも複雑かつ不安定な状態に陥ってしまうため、自分だけの力で立ち直るのは簡単なことではありません。そこで近年、「グリーフケア」の重要性が高まっているのです。
悲しみの癒やし方とグリーフケアの注意点は?
したがってグリーフケアの基本は、悲しみを受け止めること。いかなる症状も自然なものとして認め、寄り添うことです。「早く元気になってね」などと励ましたり、「いつまでも落ち込んでいちゃダメよ」などと説教じみた言葉を掛けたりしてはいけません。これは親族や友人、知人のお通夜やお葬式に参列した際にも、是非心にとめておいて下さい。「その気持ち、わかるわ」と言っても響かず、反発されるおそれがあります。
悲しみを受け止めるためには、側にいて、話を存分に聞いてあげてください。声を掛けるなら「さぞかし辛いでしょうね」がベターです。故人の写真などを見ながら、故人について話してもらうこともよいでしょう。肩や手にそっと触れるといったボディタッチをしても、「あなたの側にいるよ」という思いを伝えられます。
葬儀もグリーフケアの一つと考えられている
ショック期にある遺族は、大切な人の死に直面したことで大きなショックを受け、現実感を喪失しています。反応がぼんやりとしていて、無感覚の状態。やがて喪失期に入ると、死を現実のものとして受け入れ始めますが、葬儀が次のプロセスに進むきっかけになることもあるのです。
ご存知の人も多いでしょうが、葬儀には「遺族が死を受容する」という意味があります。故人ときちんとお別れして見送る。そうすることで、たとえほんのわずかでも一歩前に進むことができるのです。反対に、もしも葬儀を行なわなければ、いつまでも大切な人の死を受け入れられず、心の区切りをつけられないままになってしまうかもしれません。
葬儀が悲しみを表せる場所に
葬儀は、故人を想って思いっきり悲しむことのできる場。遺族のみならず、参列している誰もが悲しみ、一つの空間で悲しみを分かち合っています。したがって葬儀は、悲しみの感情と向き合う格好の機会に。葬儀を行なわなければ、素直に悲しみを表すきっかけを失くしてしまうおそれもあります。
また、故人との思い出を振り返る中で「よかった」と思えることが一つでも二つでもあれば、心の支えになるはず。葬儀中に故人を想ったり、会席の場で故人の思い出話に花を咲かせたり、そのような観点からも葬儀はグリーフケアの一つと言えるでしょう。
葬儀を終えた後も、四十九日、一周忌、三回忌…と法要を行なううちに、少しずつ心の整理をつけていけます。こういった節目の儀式は、故人の冥福を祈るばかりでなく、残された者が大切な人の死を見つめて前に進む良い機会にもなるのです。