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人生100年といわれる昨今、高齢化を見据えた民法の改正が進んでいます。中でも、世帯主の死後に残された配偶者の生活の維持は、社会的な問題となっています。今回は、2018年3月に閣議決定された「配偶者居住権」についてご紹介します。

 

配偶者と子の法定相続分

世帯主が死亡した際は、特別な遺言がない限り法定相続分にのっとって、法定相続人が世帯主の財産を相続をします。

たとえば、妻と子供が2人いた場合を例に考えてみましょう。この子供は二人とも嫡出子であるとします。

この場合は、配偶者が財産の1/2を相続し、残りの1/2を子供二人で均等に分割します。

このケースでは、配偶者が2/4、子供は1/4ずつ相続することになります。

もちろん相続人全員の合意があればこの通りに相続する必要はなく、遺言がある場合は遺言が優先されます。法定相続分はあくまでも一つの目安として考えて下さい。

 

財産が自宅のみだった場合

財産の内訳が持ち家や有価証券、現金などに分かれている場合は、すべての評価額を算出して、法定相続分に近い割合で相続します。

但し、もし財産が自宅のみだった場合には、この通りに考えると自宅を3人で分割して相続することになってしまいます。

その場合は自宅を売却して、その売却益を法定相続分にのっとって配分するか、名義を3人が分割して持つことになります。

子供たちにも所有権があるため、いつの間にか自宅が売却されてしまったというトラブルも起こり得ます。

子供それぞれに家族があった場合などは、だれが居住するかで揉める可能性もあり、結果的に残された配偶者がそれまで住んでいた住居を退去しなければいけなくなるケースも過去に見られました。

高齢となった配偶者が自宅を退去し、現金の相続もほぼないということは、それまでの生活を維持することが困難になることを表しています。

このような状況を避けるために民法による救済が考えられ、「配偶者居住権」が決議されたのです。

 

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配偶者居住権の内容とは

配偶者居住権の具体的な内容について見ていきましょう。

この改正での大きな変更点は、所有権のみであった自宅の権利に「配偶者居住権」を設定したことです。

住居の権利に「所有権」と「居住権」が設置されたことで、もし自宅の所有権が他の相続人や第三者に渡ったとしても、残された配偶者は自宅に住み続ける権利を得ることになり、この権利は配偶者が死亡するまで維持されます。

「配偶者居住権」を持つ配偶者が居住している間は、「所有権」を持つ相続人でも勝手に売却することはできません。

 

配偶者居住権の成立には、被相続人の遺産となる住居に、相続開始前から居住していることが前提となっています。配偶者以外の第三者に権利を売却したり、譲渡したりすることは出来ません。

また、配偶者居住権には「短期居住権」と「長期居住権」が設定されており、仮に配偶者が「配偶者居住権」を取得しない場合でも、「短期居住権」によって6か月間は引き続き居住できる権利が保障されています。

 

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婚姻期間が一定期間以上あれば遺産分割の計算にいれない改正も

この民法の改正では、婚姻期間が長かった配偶者に対する改正も含まれています。

婚姻期間が20年を超えた夫婦の場合、被相続人から生前贈与や遺言で譲り受けた住居は相続の計算対象から除外することも記されています。

これによって配偶者が住居を失わずに、預貯金などの財産を受けやすい状況になり、高齢者の生活に配慮した改正となっています。

 

配偶者居住権のまとめ

居住権についてまとめると、以下のようになります。

 

  権利 対象
住居 所有権

 

住居を所有する 相続人全て
婚姻期間20年以上 生前贈与、または遺言で相続した場合のみ遺産分割の計算に含めない 配偶者のみ
配偶者居住権 短期居住権 6か月間居住できる
長期居住権 死亡するまで居住できる

 

自分の死後、残された配偶者がどのように暮らしていくかはきちんと考えておきたいところです。住居の確保は、生活の基盤としては必須と言えるでしょう。ぜひ今後の参考にして、夫婦間でよく話し合っておくことをおすすめします。

 

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