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無縁墓が増える理由

無縁墓とは、継承する人も管理する人もいない、その名の通り「無縁」となったお墓のことを言います。

本来お墓は祭祀(さいし)にあたるため、祭祀継承者が継承していくことが法律(民法897条)で定められています。

明治民法では、家督を継承するものが単独で祭祀を相続することが法律で定められていました。家督継承者=長男が単独で相続することが前提であり、死亡するまでは家督を守ることが義務付けられていたのです。しかし、昭和22年に家督相続が新民法によって廃止されてからは、主として祖先を祭る役割りを担う相続人が継承することになっています。

しかし、最近では少子化や単身者の増加から祭祀継承者が存在しない、また存在したとしても維持費などの負担が重く放置してしまうなどの問題が増加しています。

維持できない場合は「墓じまい」をしてお墓を閉じる、墓地が遠方で世話ができない場合は「改葬」して近隣にお墓を移すという選択肢もあります。

しかし墓じまいをする場合にも、お墓を別の場所に移す改葬の場合にもそれなりに費用がかかります。

墓じまいをするのに大体50~100万円程度、改葬の場合はさらに新しい墓地の取得費用、開眼供養などの費用が100~200万円ほどかかることになりますので、決して少ないものではありません。

このような費用を工面することができずに、そのまま放置されてしまうお墓が年々増加しているのです。

厚生労働省では無縁墓の総数を集計してはいませんが、地方では都心への人口流出による過疎化、高齢化が進んでおり、これも無縁墓増加の原因の一つと言えるでしょう。

また、世代が変わるにつれ「代々の墓を守る」という意識が薄れてきていることも一因です。

無縁墓になるとどうなる?

無縁墓になると、墓地や霊園の一定期間立札を立てられ、所有者の連絡を待ちます。その間連絡が何もなければ、管理者によって墓地が撤去されることになります。お墓を維持するためには管理費を支払う必要がありますが、それが滞納されたまま所有者とも連絡が取れないとなると、管理側が撤去に踏み切るしかないのは致し方ないことです。

墓地を撤去したあと、残った遺骨は他の遺骨とともに合祀され、無縁仏として埋葬されます。

 

無縁墓を増やさないために

様々な理由があるにせよ、先祖代々のお墓が放置されたあとに強制的に撤去されるというのは、出来るだけ避けたい事態です。

無縁墓を増やさないためには、家族の将来を鑑みて早めの準備をするのが良いでしょう。

お墓の管理を永代供養に切り替えたり、散骨や樹木葬にするなど、いくつか方法があります。

 

永代供養

永代供養とは、墓を家系の継承者が管理する代わりにお寺が管理するシステムのことを言います。核家族化や少子化が進む現在、永代供養という方法が注目されるようになりましたが、永代供養というもの自体は、江戸時代頃から存在しています。永代供養という名前がついてはいるものの、実際には永遠に管理してもらえることは少なく、多くは3~50回忌までという期限付きです。

期限を超えたあとは、合祀になるのが一般的です。

期限までの管理費は契約時に一括して支払うことになりますので、祭祀継承者に金銭的負担がかかることはありません。

始めから合祀する場合と、一定期間は個別に管理される場合があり、費用は合祀型で20万円程度、個別型で50万円程度です。施設や管理の内容によって費用は大きく変わりますので、自分たちの目的にあった永代供養を調べてみると良いでしょう。

 

樹木葬

樹木葬とは、霊園や墓地に遺骨を埋葬する際、墓標として樹木を植えたり、樹木を墓標と見立ててその周辺に遺骨を埋葬する自然葬の一つです。骨を自然に還す方法のひとつとして、1999年以降に岩手県の祥雲寺で初めて行われたのが始まりとされています。

もちろん樹木のある場所に自由に埋葬できるわけではなく、「墓地埋葬法」という法律で認められた場所に限られます。樹木葬で使用される樹木は墓地によっても異なりますが、ハナミズキやサルスベリ、モミジなどの常緑樹の他、サクラやツツジなどが多く選ばれています。

「お墓」を必要としない供養として、また遺骨がいずれ自然に帰るという事から、祭祀継承者に負担を掛けずに済む方法の一つとなっています。

散骨

散骨とは、遺骨をお墓に埋葬せず、粉末状にした遺骨を海や山などの自然に撒くことです。日本では、「墓地、埋葬に関する法律」が定められているため、墓地以外の場所に遺骨を埋葬することはできません。しかし散骨に関しては比較的新しい手法であるため法律が整備されておらず、散骨を請け負う業者が独自の基準によって対応していますので、業者選びは慎重に行った方がいいでしょう。信用できる葬儀社に紹介してもらうのも良い方法です。

先祖代々の墓を墓じまいして、すべての遺骨を散骨するとなると費用もそれなりにかかりますが、これも無縁墓を作らないための選択肢の一つです。

 

社会問題になりつつある無縁墓ですが、少子高齢化が進む現代では他人事ではありません。家族に負担を残さないためにも、早めに対応を考えておくと安心です。

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