お葬式の準備
お葬式の準備
死後事務委任契約とは
エンディングノートの重要性についてはこれまでにご紹介してきました。でも、家族がいない一人暮らしの場合、親戚はいても遠方に暮らしているために疎遠になってしまっている場合。エンディングノートはいったい誰に残せばよいのでしょうか。
残す相手がいなければ、エンディングノートは必要ないものなのでしょうか?
「おひとり様の終活」でもご紹介した通り、そういうケースこそエンディングノートが必要です。ここでは死後の準備という考えで、「死後事務委任契約」について詳しくご紹介します。
一人暮らしのまま亡くなったら…
あまり縁起の良い話ではありませんし、できれば考えたくないことです。しかし高齢化が社会現象化する現在では、高齢者の孤立死ももはや他人事ではありません。
自分が、自分の死後に望むことはいったい何でしょうか?
残す家族がいないのなら、自分が死んでしまった後のことなど関係ないと考える人もいるかもしれませんが、よくよく考えれば実は色々あるものです。
もし自分の死を誰にも知られず、お葬式も行われず、お墓に入ることもできないとしたら、どうでしょう。
せめて親しい友人や知人だけでもそのことを知らせたい、ささやかでも良いからお葬式を出してほしい、両親の眠るお墓に埋葬してほしい…などなど、いざとなると希望は次々と出てくるものです。でも、それらは一体だれが手続きしてくれるのでしょうか?
もちろん、それだけではありません。実は死後の手続きというのは想像以上にたくさんあるのです。
死後に必要な手続きや処理には何がある?
死後の手続きや処理は、以下のようになります。
●葬儀
●火葬
●埋葬
●死亡届など、役所へ諸届提出
●遺品整理
●遺産相続手続き
●住居の退出手続き
●病院の退院手続き
●保険や契約の解除、精算
ざっと上げるだけでもこれだけの手続きが発生します。もし自分に家族がいなかったら、これだけの手続きはいったい誰がやってくれるのでしょうか。
自分のお葬式は役所がしてくれる?
何かあった時は、役所が処理してくれると考えている人は少なくありません。しかし、役所が行うのは「行旅病人及行旅死亡人取扱法」という法律に基づいて行う火葬と埋葬のみで、葬儀までは行ってくれません。当然ながら知人、友人には知らされることなく事務的な処置が行われるのみです。
もし何もしないままでいると、ささやかなお葬式さえも行われないまま、無縁塚に埋葬されることになりかねません。
そこで、本人に代わって委任された第三者が死後の事務手続きを行うのが「死後事務委任契約」なのです。
死後事務委任契約とは
死後事務委任契約とは、自分の死後を託せる家族がいない場合や、親戚がいても遠方で疎遠になってしまっている場合に、第三者に死後事務を委任する契約です。自分が亡くなったあとに関するお葬式のことや埋葬するお墓のこと、その他の手続きに関することを自分が元気なうちに、第三者に代理権を与えて依頼しておくことができます。死後事務委任契約で依頼できる内容には、以下のような内容があります。
●遺体引取り・搬送
●役所への死亡届の提出、戸籍関係の諸手続き
●健康保険、公的年金等の資格抹消手続き
●勤務先企業・機関の退職手続き
●病院・医療施設の支払い、退院・退所手続き
●通夜、告別式、火葬、納骨、埋葬に関する手続き
●永代供養に関する手続き
●家賃・地代・管理費等の支払いと敷金・保証金等の支払い手続き
●住居内の遺品整理
●公共料金の精算・解約手続き
●住民税や固定資産税の納税手続き
●関係者への死亡通知
●遺産の処理・分配
もちろんすべてを委任する必要はなく、希望する内容のみを限定して依頼することもできます。委任者が死亡することで契約が開始され、受任者は契約内容に沿って手続きや処理を行います。
死後事務委任契約を結ぶ方法
依頼する相手は誰でもかまいません。友人や知人でも良いですし、司法書士や弁護士などに依頼する方法もあります。
書面に契約内容を記載し、委任者と受任者が署名捺印をすることで契約が完了します。必ずしも公正証書である必要はありませんが、公正証書にしたほうがより安心です。
委任者から受任者へ、死後事務手続きに関する報酬を支払う場合は契約書に金額を定めます。必ず報酬が必要ではなく、特に定めが無ければ無償での契約ということになります。
但し、友人や知人には頼みにくいという場合や、確実に実行されるか不安が残る場合は、司法書士や弁護士などに依頼することになります。この場合は有償となり、契約内容によって費用は変わります。
これらに関する依頼や希望は、言ってみれば、第三者にあてたエンディングノートのようなものです。
もしもの時のために、このような制度を使ってみるのも終活の一つではないでしょうか。