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成年後見人制度

成年後見人制度は、障害や病気などで判断能力が不十分な人を保護し、支えるために定められた法律です。本人の判断能力の程度によって、「後見」「保佐」「補助」を行い、これを援助する人を「成年後見人」、または「保佐人」、「補助人」などと呼びます。

民法第二節、行為能力の第七条には以下のように定められています。

 

(後見開始の審判)

第七条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁 判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保 佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。

 

「精神上の障害」というと特別な病気のように感じますが、知的障害や脳機能障害の他に認知症や加齢によって十分な判断ができない状態も含まれます。

全国の家庭裁判所が取りまとめた成年後見関係事件の集計によると、申し立ての事由は認知症が最も多く、6割を超えています。

 

成年後見人開始原因別割合

原因 割合
認知症 64.1%
知的障害 9.9%
統合失調症 9.0%
高次脳機能障害 4.8%
遷延性意識障害 0.9%
その他(発達障害、うつ病、双極性障害、アルコール依存症、てんかんによる障害等) 11.2%

※成年後見関係事件の概況より抜粋

https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2020/20210312koukengaikyou-r2.pdf

 

高齢化にともない認知症を抱える高齢者も年々増加しており、内閣府の「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」によると、2020年度の65歳以上の高齢者の認知症有病率は16.7%となっており、約602万人が認知症を患っていることを示しています。

また、2060年には850万人が認知症になるとも予測しています。

https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/zenbun/pdf/1s2s_03.pdf

 

認知症がこれだけ増加していることを考えると、自分自身や家族がいずれ認知症になる可能性は決して低くはありません。正常な判断ができなくなる前に、成年後見人を選出して自身の財産の管理をすることともに、遺産分割に供える必要があります。

成年後見人制度の類型の違いは、以下の通りです。

援助の類型 後見 保佐 補助
本人(援助を受ける人)の判断能力 判断能力がない。 あるいはほぼない 判断能力が著しく不十分 (少しはある。) 判断能力が不十分(保佐 類型と比べるとあるが,や やこころもとない。)
イメージ 日常的な買い物が援助が あってもできない,あるい は著しく困難である。 日常的な買い物はできる (援助を受ける場合も含 む)が,大きな買い物(不 動産,車など)はできな い。 大きな買い物(不動産,車 など)もできるかもしれな いが,やや不安がある。そ のことを本人もほぼ自覚で きている。
自分自身,家族,場所,今 日の年月日などが全くある いはほぼわからない(見当 識障害が高度)。 自分自身,家族,いる場 所,今日の年月日などが わかるときもあれば,おぼ つかないときもある。 自分自身,家族,いる場 所,今日の年月日などは ほぼわかっている。
記憶障害が非常に重い。 記憶障害あり。程度は重 い~軽いまでいろいろ。 記憶障害はない。あったと しても軽い。
開始に本人の同 意が必要か? 不要 不要 必要

※熊本家庭裁判所「成年後見申し立ての手引き」より抜粋
h30seinenkoukenmousitatenotebiki.pdf

成年後見人が必要な時は?

成年後見人はこのように判断能力が不十分な人を支える制度ですが、具体的にどのような時に必要になるのでしょうか。以下は、申し立ての動機の割合です。

 

主な申立ての動機別件数・割合

申立ての動機 割合
預貯金等の管理・解約 37.1%
身上保護 23.7%
介護保険契約 12.0%
不動産の処分 10.4%
相続手続 8.0%
保険金受取 4.2%
訴訟手続等 2.1%
その他 2.5%

※成年後見関係事件の概況より抜粋

https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2020/20210312koukengaikyou-r2.pdf

 

これによると、預貯金の管理、解約が一番の動機となっています。

例えば入院中の高齢者が認知症を発症したケースを考えてみましょう。入院費用を本人の預貯金から支払う、または定期預金を解約して支払うといった場合、家族と言えども他人が本人の承諾も無しに預貯金の引き出しや定期預金の解約を行うことはできません。

その場合は本人の委任状が必要になりますが、それを行う判断力が不十分である場合は委任が成立しなくなってしまうのです。

もちろん、それだけではありません。もし家族が認知症を発症した場合、本人の預貯金の管理ができないばかりか、保険の契約や相続の際の遺産分割の協議が事実上困難になり、必要な保険の契約ができない、また遺産の相続が出来ないという問題が発生する可能性があります。

こういった事態を避けるために、「成年後見人制度」があるのです。

 

成年後見人選出の流れ

成年後見人の申し立てから後見登録までの流れは以下の通りです。

申立準備

・裁判所の確認:申し立てをする裁判所を確認します。本人の住民票上の住所地を管轄する裁判所が申立先になります。

・申立人を決める:申立人を決めます。申立てができるのは、本人,配偶者,4親等内の親族※,成年後見人等,任意後見人,任意後見受任者,成年後見監督人等,市区町村長,検察官です。

・書類の準備:申立てに必要な書類を準備します。

(申立書、診断書(成年後見用)、申し立て手数料(1件につき800円分の収入印紙)、登記手数料(2,600円分の収入印紙)、本人の戸籍抄本等)

面接予約

・書類や費用が整ったら、申立てをする家庭裁判所に電話をして、面接の予約をします。

申立(書類提出)

・面接日と予約番号(家庭裁判所によっては無い場合もあります)を提出書類確認シートに記載して、申込書類と収入印紙を申立てをする家庭裁判所宛てに発送します。

面接予約日までに書類が届かない場合は面接が取消になる場合がありますので、必着日を確認しえおきましょう。

面接

・予約した日時に家庭裁判所で面接を行います。概ね1時間程度で、場合によっては追加の書類の提出を求められる場合があります。

審査

・家庭裁判所が審査を行います。必要に応じて医師への追加鑑定や、本人や候補者への調査を行うことがあります。概ね1~2ヶ月ほどかかります。

審判

・家庭裁判所から審判があります。申立書に記載された候補者が必ず専任されるわけではなく、専門的な知見が必要と判断された場合には弁護士や司法書士を選任することもあります。

これに対する不服申し立てはできません。

後見登記

家庭裁判所によって審判された内容に沿って、後見登記を行います。

上記は一般的な後見人選出の流れになりますが、詳細は管轄の裁判所に問い合わせてから進めるようにすると安心です。

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