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尊厳死とは

尊厳死とは平穏死とも言われ、過剰な延命治療を選択せずに、自然の経過に任せることを言います。安楽死と混同されがちですが、少しニュアンスが異なります。

安楽死は余命を宣告された病人に対し、できるだけ苦痛を与えずに死を迎えることができるように医療上の処置を行うことを指します。

つまり、末期患者の苦痛を除去することに努め、場合によっては死期を早めることもあるものです。

 

医療技術の目覚ましく進歩していきますが、一方で過剰な延命措置が患者に大きな苦痛を与えることも少なくありません。時に患者の尊厳を奪うこともあります。

ただ苦しいだけの日々を過ごすと分かっていて命を伸ばすのなら、自然に任せて死を迎えたいと考える。それが尊厳死の考え方です。

 

延命医療が当然の日本

世界でも男女ともに平均寿命が長いことで知られる日本ですが、一方で寝たきりの高齢者が多いことも指摘されています。これには、日本の医療が、延命措置が当然のこととされている点が影響しているます。

例えば、食事が取れなくなると死期が近いと考えられているため、胃ろうや点滴などで栄養を補給します。その結果、命は長らえても体を動かすことが困難になっていき、その結果寝たきり状態になるのです。

 

これに対して、国民の幸福度が世界一と言われる福祉大国のスウェーデンでは、寝たきりの高齢者がいないと言われています。

福祉が発達していることから手厚い処置が受けられるような印象もありますが、スウェーデンでは死に対する価値観が日本とは異なるようです。

かつては過剰な延命治療が行われていた時期もあったようですが、次第にそれが本人にとっても家族にとっても幸せなことではないと分かり、できるだけ自然な状態で死を迎えることが、一つの幸せの形だという認識に変化していったようです。

日本ではこういった考えはまだ少数派ではありますが、最近少しずつ増えてきています。

尊厳死宣言書

現代医学の考えでは、患者の命が続く限り最期まで治療を続けるという考えに従って治療を行います。そのため、延命治療を停止したい場合はその旨を明確に伝える必要があります。

意思を伝えるためには、「尊厳死宣言書」を作成するようにしましょう。
書式に決まりはありませんが、以下の内容を記載するようにして下さい。

 

延命治療を行わず、尊厳死を選択すること

苦痛を和らげる措置は希望すること

尊厳死に家族も同意していること

医師には責任がないこと

自身が撤回しない限り、この宣言が有効であること

 

上記を記した書面に署名・捺印し、医師に提示します。この書類でも効力はありますが、さらに確実にしたい場合は公証人に「尊厳死宣言公正証書」を作成してもらう方法もあります。

患者の意思を尊重して過剰な延命措置を停止する、または当初から行わない医師は多く存在します。日本尊厳死協会のホームページによると、患者の意志を尊重して力になりたいと表明する医師は2014年1月で1200名※いると書かれており、現在も増え続けています。
※日本尊厳死協会HPより

 

尊厳死に関する法律

日本では尊厳死について定められた法律がありません。

2004年、2005年と続けて、終末期の患者について医療の中止が行われ、警察が介入する事件がおきました。

これを受けて、2007年には厚生労働省によって「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」が策定されました。

2018年には「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」にその名称を変え、病院のみでなく在宅医療の現場における延命治療についてガイドラインが示されています。厚生労働省では、ガイドライン作成の経緯を以下のように説明しています。

 

    【ガイドライン作成の経緯】

平成19年にとりまとめた「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」は、平成18年3月に富山県射水市における人工呼吸器取り外し事件が報道されたことを契機として、策定されたもの。

人生の最終段階における医療の在り方に関し、

 

・医師等の医療従事者から適切な情報提供と説明がなされ、それに基づいて患者が医療従事者と話し合いを行った上で、患者本人による決定を基本とすること

・人生の最終段階における医療及びケアの方針を決定する際には、医師の独断ではなく、医療・ケアチームによって慎重に判断すること

などが盛り込まれている。

※厚生労働省のHPより抜粋

延命治療を本人や家族が望む場合もあるでしょう。延命治療を受けるか、尊厳死を選ぶかは人によって違います。しかし、一律の延命治療ではなく、患者本人による決定を基本とするというガイドラインは、選択肢の広がりを示していると言えるのではないでしょうか。

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