お葬式の準備
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葬祭扶助制度とは?制度の内容と適用範囲
身近な人の死は突然訪れるものであり、葬儀には多くの費用がかかります。しかし経済的に困難な状況では、その負担が大きな問題となることも少なくありません。こうした場合に利用できるのが「葬祭扶助制度」です。生活保護法の一つとして設けられたこの制度は、最低限の葬儀に必要な費用を自治体が負担し、故人を尊厳をもって見送るための支えとなっています。
葬祭扶助制度とは?
葬祭扶助制度とは、生活保護制度の一部として設けられている仕組みで、経済的に困難な状況にある方が葬儀を行う際に、自治体が必要な費用を負担してくれる制度です。
生活保護制度には「生活扶助」「教育扶助」「住宅扶助」「医療扶助」「介護扶助」「出産扶助」「生業扶助」「葬祭扶助」の8つの制度があります。「葬祭扶助制度」がこの内の一つとなっていることから、生活保護を受けている人だけが対象になると勘違いしている人も多いのですが、生活保護を受けていなくても対象となります。
故人が生活保護を受けていた場合はもとより、遺族に葬儀費用を負担できる資力がない場合も対象となり、火葬を中心とした最低限度の葬儀を執り行うことができます。
この制度を利用した葬儀は「福祉葬」「生活保護葬」などとも呼ばれ、一般的な通夜や告別式を伴うものではなく、いわゆる「直葬」という形式で進められるのが一般的です。
支給される金額は自治体や状況により異なりますが、概ね20万円前後で、棺・骨壺・寝台車・火葬料金・ドライアイスなど、葬儀に必要な最低限の費用が含まれています。
また、葬祭扶助は原則として自治体から葬儀社へ直接支払われる仕組みになっており、申請者が立て替える必要はありません。宗教者へのお布施や戒名料、祭壇や供花などは含まれず、シンプルな内容に限られる点が特徴です。経済的に困難な中でも尊厳を持って故人を送り出せるように整えられた制度といえるでしょう。
以下は葬祭扶助基準額になります。自治体によって異なるため、詳細は問合せしてみて下さい。
葬祭扶助基準額
級地別 | 大人 | 子供 |
1級地及び2級地 | 215,000円以内 | 172,000円以内 |
3級地 | 188,100円以内 | 150,500円以内 |
※厚生労働省令和6年4月1日施行 生活保護実施要領等より

葬祭扶助を受けられる条件
葬祭扶助を利用できるかどうかには、いくつかの条件があります。前提として「故人や遺族が経済的に困窮しており、葬儀費用を負担できない」という状況であることが基本です。そのうえで、次の2つの条件のいずれかに該当する場合に制度を利用できます。
●お葬式を行う遺族(配偶者、父母、子、兄弟姉妹)が生活困窮者である場合
まず1つ目は、故人の遺族が生活保護を受けている、またはそれに準ずる経済的困難な状況にあり、葬儀費用を負担できない場合です。故人が生活保護を受給していたとしても、遺族に十分な収入や資産がある場合には制度の対象外となります。
●生活保護受給者自身が死亡し、そのお葬式を行うべき親族がいない場合、お葬式を行う意思のある第三者
2つ目は、扶養義務者がいない、または遺族以外の方が葬儀を手配するケースです。例えば、身寄りのない方が亡くなった場合に、家主や民生委員などが葬儀を行うことがあります。この場合にも葬祭扶助を申請することができます。
支給される範囲は、生活保護法で「検案、遺体の搬送、火葬または埋葬、納骨、その他葬祭に必要なもの」と定められています。つまり、遺体の移送や安置、火葬、納骨までを最低限行えるような内容が対象です。詳細な支給額や取り扱いは自治体によって異なるため、事前にケースワーカーや福祉事務所へ相談することが望ましいでしょう。
葬祭扶助が受けられない人
葬祭扶助は、すべての方が利用できるわけではなく、一定の条件に該当しない場合には受けられません。
●遺族に葬儀費用を支払えるだけの収入や資産がある場合
生活保護を受けていない場合でも、経済的に葬儀費用をまかなえると判断されれば、扶助の対象外となります。
●故人に扶養義務者が存在する場合
例えば子や兄弟姉妹といった親族が健在で、経済的に一定の能力があるとみなされた場合には、その方々が葬儀を負担すべきとされ、葬祭扶助は適用されません。
●葬儀の後に申請した場合
葬祭扶助は必ず葬儀前に申請することが原則となっており、事後の申請は認められません。そのため、制度を利用したいと考えた際には、早めに役所や福祉事務所へ連絡し、申請の意思を伝えることが必要です。
また、制度の性質上、一般的な葬儀を希望する場合や、自己資金を追加して豪華な葬儀を行いたい場合も対象外です。扶助の目的はあくまで「最低限の葬儀を行うこと」であるため、祭壇や僧侶への依頼、戒名授与などは含まれず、費用を上乗せすることもできません。こうした点を理解したうえで、利用を検討する必要があります。
葬祭扶助の受給手続き
葬祭扶助を受けるためには、必ず葬儀の前に所定の手続きを行う必要があります。一般的には喪主や施主が申請者となりますが、委任状や必要書類を揃えれば葬儀社が代行して申請することも可能です。申請先は、市町村役所の福祉課や福祉事務所で、申請者の住民票がある自治体に申し込むのが原則です。
申請の流れとしては、まず故人の搬送や安置を済ませた後、速やかに福祉事務所に連絡し、葬祭扶助を申請します。その際には以下の情報を準備しておきましょう
●死亡診断書
●申請書
●委任状(葬儀社が代行する場合)
●印鑑
また申請者の住所や遺留の金品の状況についても確認が求められますので、情報を準備しておくと良いでしょう。申請が受理されると、自治体が費用の支給を承認し、葬儀社に対して直接費用が支払われる仕組みです。
注意点として、制度に対応していない葬儀社もあるため、事前に「葬祭扶助を利用したい」と伝えておくことが重要です。また、支給額や対象範囲は自治体によって異なるため、利用前に確認することが安心につながります。こうした手続きを踏めば、経済的に困難な状況でも安心して故人を見送ることができます。