お葬式の準備
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おひとりさまの終活~後編~
近年、高齢者の孤立死が社会問題になっています。「おひとりさまの終活~前編~」(記事にリンク)では、孤独死と孤立死の違いや、孤立死を防ぐためにおひとりさまが心がけたいこと、終活活動例などについてお話しました。後編では、おひとりさまの老後をサポートしてくれる各種契約や、実際に行なわれている行政の取り組みを紹介しましょう。
さまざまな契約でおひとりさまの老後をサポート
「おひとりさまの終活~前編~」で、孤立死を防ぐためにおひとりさまが心がけたいことを下記のようにお伝えしました。
●友人や隣近所の住民たちとの人間関係を育み、ネットワークを作る
●互助会や保険を利用するなどして、老後や死後にかかる費用を備える
●病気や寝たきりにならないように健康的な生活を心がける
●なるべく物を増やさず、身の回りをスッキリと片付ける
●終活を行なう
さて、ここからが後編の本題です。終活をして、たとえば葬儀社を選んでも、お葬式を任せられる家族や親族のいないおひとりさまはどうすればよいのでしょうか?
そのようなおひとりさまは、第三者(友人知人・専門家など)に託すための契約を元気なうちに結んでおくと安心。本人の判断能力が正常なとき、認知症などで判断能力が低下または喪失したとき、亡くなった後、この3つの段階のそれぞれにおいて、おひとりさまをサポートしてくれる契約があるのです。
判断能力が正常
●見守り契約
●財産管理委任契約
判断能力の低下・喪失
●任意後見契約
亡くなった後
●死後事務委任契約
それでは、各契約を簡単に説明していきましょう。
●見守り契約
受任者が定期的に電話や訪問(面談)をします。健康状態や判断能力、生活状況を把握することを目的とし、電話や訪問の回数・頻度、報酬など内容は自由に設定できます。「任意後見契約」と同時に締結する人が多く、本人の判断能力が低下したら「任意後見契約」をスタートします。
●財産管理委任契約
内容は自由に設定できますが、一般的に財産管理事務(財産の管理、家賃などの支払い、年金など収入の管理、生活必需品の購入など)と身上監護事務(要介護認定の手続き、福祉サービスや施設入所の契約の締結、入院の手続きなど)を受任者が代行します。
「任意後見契約」とセットで契約するのが一般的。寝たきりの人、身体機能が低下してきている人、心身ともに健康だがサポートがほしい人など、判断能力が正常であれば誰でも締結できます。
●任意後見契約
認知症などで判断力が低下したときに備え、財産管理や身上監護を任せられる後見人をあらかじめ決めておくこと。
●死後管理委任契約
亡くなった後の届出や葬儀・納骨・の手続き、遺品整理、住居の明け渡しなどを受任者が代行します。詳しくは「死後事務委任契約とは」で紹介しています。
各契約の費用は事業所によって異なります。契約する際は、「どこまでやってもらえるのか」という契約内容や費用をきちんと調べるようにしましょう。費用を安く抑えるために、まずは信頼できる友人に可能な範囲でお願いできるとよいですね。おひとりさま同士で協力し合えればベストですが、そうでなくても気兼ねなく相談できる友人がいれば心強いもの。だからこそ日頃の人間関係が大切になります。
行政がおひとりさま向けの珍しいサービスを開始!
「おひとりさまの終活~前編~」(記事にリンク)でお話しましたが、行政ではおひとりさまの高齢者が安心して暮らせるように孤立死防止対策を推進しています。最後に神奈川県横須賀市が2015年7月に開始した、おひとりさまの高齢者向けの珍しい取り組み「エンディングプラン・サポート事業」を紹介します。
横須賀市が開始した「エンディングプラン・サポート事業」は、生前に葬儀社と契約を結び、お葬式について決めておくというものです。
対象となるのは、死後、遺体の引受先がないおひとりさまの高齢者の中で、お葬式を行なうのが困難な低収入の人。原則として月収16万円以下、預貯金100万円以下程度のおひとりさまと決められています。
これまで神奈川県横須賀市では引受先のない遺体を火葬し、特定の納骨堂に収めてきました。しかし近年は孤立死の増加により、納骨堂が常に満杯状態に。そんな中、わずかながらの葬儀費用を残して亡くなるおひとりさまもいますが、行政は相続人ではないため、費用を勝手に使うことはできないのです。
「エンディングプラン・サポート事業」は、費用の関係で死後委任事務契約に頼れないようなおひとりさまの高齢者が、少しでも希望に沿ったお葬式をできるようにと考えられた策と言えます。
普及するかどうかはまだ先の話になってしまいますが、社会問題化した「終活」に関する一つの選択肢になるのは間違いありません。
前編から後編にわたっておひとり様の終活の方法をご紹介しましたが、ぜひ自分にあった方法を検討してみてはいかがでしょうか。