お葬式の準備
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納棺にかかる費用とは?
納棺は、故人を安らかに送り出す大切な儀式です。この記事では、納棺の意味や流れ、費用の目安から具体的な内訳までを紹介します。
納棺とは
納棺とは、その文字どおり「棺に納める」という意味を持ち、故人の体を清めて衣装を整え、副葬品などを収めたうえでお棺に納める一連の儀式を指します。単に棺へ移すだけではなく、その前段階として「湯灌(ゆかん)」と呼ばれる体を清める作法や、死装束を整える準備なども含まれることが多いです。湯灌には、お湯や清水で体を拭いたり、髭剃りや爪切り、髪の毛の手入れなどを行う意味合いもあり、亡くなられた方がきれいな姿で旅立てるように整える役割を果たします。
さらに、納棺には宗教的・文化的な意味も込められています。仏教であれば白装束や経帷子を着せる、神道なら白い着物に麻の帯をつけるなど、宗教に応じた死後の装いが伝統として続いています。また、棺には故人の思い出の品や、あの世での暮らしに必要とされる副葬品を一緒に納めることで、安心して旅立てると信じられています。
このように納棺は、単に遺体を納める作業ではなく、亡くなった方への感謝とお別れの気持ちを込めた大切な儀式として、多くの人に受け継がれています。家族にとっても、故人との最後の時間を穏やかに過ごす大切な場面と言えるでしょう。
納棺の流れ
納棺の流れは、地域や宗教によって差があるものの、一般的には一定の手順に沿って進められます。最初に「末期の水」と呼ばれる儀式を行い、これは臨終の直前や直後に口元を潤すもので、最後の別れを象徴するものです。続いて湯灌の工程に入ります。湯灌では、白湯や清水で体を洗い流して清め、死後硬直をほぐしたり、清潔に整えたりします。
さらに、髭剃りや髪の毛のセット、爪切りなどの身だしなみを整えたうえで「死化粧」を施します。これは故人の生前の面影を大切にし、穏やかな表情で旅立てるようにするためのものです。女性の場合はお化粧、男性の場合も血色を良く見せる程度のメイクをするケースがあります。
身支度を整え終えた後は、死装束を着せます。宗派や地域によって白装束の種類や着付け方が異なることもありますが、いずれも故人が無事にあの世へ旅立てるよう願いが込められています。そして副葬品として、手紙や写真、愛用品、食べ物などを棺に納めます。
最後に家族で合掌し、別れの言葉をかけながら棺の蓋を閉めます。この一連の流れが納棺であり、遺族にとっても心を落ち着けて故人を送り出す大切なひとときとして位置付けられています。
納棺の費用
納棺にかかる費用は、一般的に8万円から10万円ほどが相場といわれますが、葬儀社や地域によって幅があります。特に湯灌の内容や死化粧、死装束の種類、さらに副葬品などのオプションをどのように選ぶかで金額に差が出ます。
湯灌だけを簡易的に行う「古式湯灌」の場合は3万円から5万円程度で済むこともあります。こちらは浴槽を使用せず、清拭(せいしき)と呼ばれる体を拭き清める方法で行うものです。一方で「普通湯灌」として浴槽を持ち込み、本格的に入浴させる場合は10万円前後かかるケースが多く、葬儀社のスタッフが細かいケアまで行うためその分の人件費も加わります。
また、死装束については数千円程度から高級品だと数万円を超える場合もあり、レンタルを利用することで費用を抑える選択肢もあります。さらに死化粧に専門の納棺師を依頼した場合は、1万円から2万円程度の追加費用がかかるケースが見られます。
このように、納棺にかかる費用は「湯灌」「死装束」「死化粧」といった各項目の組み合わせで決まるため、希望に応じて調整できる部分も多いです。見積もりを取って比較することで、予算に合わせたプランを選ぶことができます。
●湯灌にかかる費用
納棺の費用明細を具体的に見ると、湯灌にかかる金額として5万円から10万円が中心です。これは湯灌の方法や内容で差があり、古式湯灌なら3~5万円程度、普通湯灌なら10万円程度が一般的です。さらに死装束は、既成品のレンタルなら数千円、高級絹素材や特別仕立てのものは10万円以上になることもあります。
●死化粧
死化粧を依頼した場合には1万円から2万円前後の料金がかかります。顔や髪を整え、自然な表情で送り出すために専門の技術者が対応するケースが多いです。加えて、納棺に立ち会う親族や関係者が多い場合には、式場の利用料やドライアイスの追加費用が必要になることもあります。
さらに副葬品の準備費用や、棺の中に入れるお花代なども含めると、合計で10万円以上かかることが少なくありません。葬儀社によっては「納棺セット」としてパッケージプランを用意している場合もあり、セット内容で価格が変わる点も確認しておきたいところです。
近年では、家族だけで簡素に行う「家族湯灌」や「自宅納棺」などを選ぶ方も増えており、その場合は必要最低限の支出にとどめられるケースもあります。納棺の費用は、葬儀全体の中でも見落としがちな部分ですが、後で慌てないように明細までしっかり把握しておくと安心です。
納棺は、亡くなられた方の旅立ちを整え、家族が心穏やかに送り出すための大切な儀式です。単に棺に納めるだけでなく、湯灌で体を清め、死装束を整え、副葬品を納めるまでの一連の流れに意味が込められています。費用については相場8万円から10万円程度ですが、湯灌の種類や死化粧の有無、オプションで大きく変動するため、事前に見積もりや明細を確認しておくと安心です。
故人らしさを大切にしながら、家族が納得できるかたちでお見送りできる納棺を選んでいきたいものです。