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松明の意味

松明は、仏式のお葬式で使われる装具の一つです。葬具には、松明の他に四本幡(しほんはた)や四華花(しかばな)などがあります。

松明は、木や竹の割り木でつくられた棒や竿の先端に枯草や木の枝を束ねたものに火をつけて、野外用の灯りとして使う道具です。これ自体は灯りを取るために使うもので、宗教に由来するものではありません。

しかし、古来より火は神聖とされてきたため、松明は祭りなどの神事でよく使われて来ました。これは世界各国で見られる習慣で、神に捧げたり、無病息災や豊作を願って松明に火をつけます。その歴史は古く、日本では日本書紀にその起源を見ることができます。

インドを発祥とする仏教も例外ではなく、死者を弔うお葬式の中で松明を使用します。

 

松明の使い方

仏式のお葬式では、導師が引導を渡す際に松明を使います。最近のお葬式では安全面への考慮から、実際に火をつけた松明を使うことはありません。多くは松明に見立てた別の道具を使用します。

木の棒の先に、火に見立てたひも状の赤い布が何本かついているものを使うのが一般的です。

引導とは故人を浄土に導くための儀式で、導師によって遺体を火葬する儀式を行うことを「引導を渡す」と言います。慣用句では最期にとどめを刺すようなケースで使われますが、そもそもは「浄土へと導くこと」を現す仏教用語です。

実際の火葬は火葬場で行うため、実際の点火は行わずに儀式のみが行われます。仏教でもすべての宗派で行われるわけではなく、浄土宗、臨済宗、曹洞宗、真言宗などで見られる儀式です。

参考までに浄土宗で行われる下炬引導(あこいんどう)の儀式をご紹介します。

 

下炬引導(あこいんどう)

浄土宗の儀式では、引導を渡すことを下炬引導と言い、最も重要とされています。下炬引導は故人を浄土に導くために引導を渡す儀式で、火葬の点火を導師が行います。現在の火葬は火葬場で行われるため、実際の点火はせず儀式のみ行われます。

松明に見立てた法具を二つ手にとり一方を捨て、一方の松明で円を描き、「下炬の偈(あこのげ)」を読み上げたあとにもう一本も捨てます。

浄土宗では「下炬引導」と言いますが、臨済宗や曹洞宗では「引導法語(いんどうほうご)」と呼ばれ、導師によって法語が読まれます。引導の儀式は宗派によって多少異なりますが、その意味や松明の役割は大体同じです。松明は二本使う場合もあれば、一本のみの場合もあります。

但し、浄土真宗では松明を使った引導の儀式はありません。

浄土宗と浄土真宗」でもご紹介していますが、同じ浄土系でも浄土宗と浄土真宗では異なる部分が多くあります。

浄土真宗では、死者は誰もが浄土へ行けると考えられているため、導師の浄土への導きは必要が無いのです。

儀式の最期を締めくくる道具

仏式のお葬式で松明を使うときは、儀式の締めくくり、最期のクライマックスです。故人を浄土に導くために、導師が法語とともに引導を渡します。
遺族にとっては最後のお別れの瞬間であり、故人はあの世へと旅立っていきます。
松明にどのような意味が込められているのかを知ることによって、儀式の意味も深まるのではないでしょうか。

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