facebookでシェア twitterでシェア
枕刀とは

枕刀(まくらがたな)は守刀(まもりがたな)ともいい、お葬式で使う装具の一つです。日本では古くから、故人を安置した枕元や胸元の上、納棺後の棺の上に刀を置く風習がありました。

そもそも日本刀は戦の場で敵と戦うために武士が身に付けるものでしたが、江戸時代に入って戦が減るにつれてその意味も変化して行きました。

最近では日本刀を持つ家庭は減り、日常生活で日本刀を目にする機会は減少しています。

そのためお葬式で使われる枕刀は葬儀社が用意するものを使うことがほとんどですが、先祖代々の守刀や故人が大切にしていた日本刀がある場合は、それを使うのが良いでしょう。刀、脇差し、短刀、どれを使っても問題ありません。

 

魔除けの意味を持つ日本刀

さて、このように古来からの風習として使われている枕刀ですが、そもそもどのような理由で故人の側に刀を置くのでしょうか。

天皇家に代々受け継がれてきた三種の神器の一つである草薙剣(くさなぎのつるぎ)が伊勢神宮に鎮座して国を見守っているように、“敵や邪悪なものから身を守る”ことの象徴が刀であると言えます。

お葬式で使われる枕刀は、「故人を守るもの」としての意味が大きいと考えられています。故人が四十九日を迎えて無事に浄土へ旅立つまでの間、悪霊が近寄ることがないようにと遺族が願ったのが、遺体の側に刀を置く意味です。遺体に動物が近づかないように刀を置いたという説もあります。

また、故人が死出の旅に出る準備として遺体には白装束を着せますが、旅の道中に危険な目に合わぬよう、身を守るためのお守りとして守刀を持たせたのが風習として受け継がれてきたこともあります。

武家の娘が嫁入り道具として短刀を渡されていた習慣もあり、日本刀は「お守り」として社会に根付いてきたと言えます。

 

宗派による違い

このように、古くから故人を守る象徴として遺体の側に置かれてきた枕刀ですが、仏式に限らず神式のお葬式でも同じ習慣が見られます。

仏式では魔物から故人を守る、また死出の旅の守刀としての意味を持ちますが、神式では死を「穢れ」と捉えているため、この穢れを祓うために守刀を置いたと言われます。

また同じ仏式でも、浄土真宗では守刀を使いません。浄土真宗では、人は亡くなると同時に浄土に召されると考えられているため、悪霊から故人を守る必要もなく、四十九日間の旅路を守る必要もないからです。

但し、仏教に魔除けの刀を置くという教えがあるわけではなく、無宗教葬であっても棺に枕刀が置かれることがあります。あくまでも日本における慣習がお葬式に結び付いたものだと言えるでしょう。

 

お葬式で使う枕刀

枕刀は、必ずしも本物の刀を使用する必要はありません。葬儀社が用意する枕刀は本物の刀ではなく模造品であることがほとんどです。日本では銃刀法が定められており、「刃渡り十五センチメートル以上の刀、やり及びなぎなた、刃渡り五・五センチメートル以上の剣」については届出なしに所持することが禁じられています。届出を行えば所持ができないということはなく、骨董品の一つとして所有しているケースもありますが、誰もが所持しているほど一般的ではありません。

故人の胸元や棺の上に置く際は、刃先を顔に向けないよう、足先に向けて置きます。遺体や棺を動かす人がケガをしないよう、鞘に納め、刀袋に包んで置くのが基本です。

葬具として使われる枕刀は20cm程度の短刀で、刺繍を施した刀袋に納められているものが多く見られます。地域によっては剃刀や包丁を使う事もありますが、全国的にみられる慣習の一つです。

このように故人を守る意味を込めて置く枕刀ですが、棺に納めて火葬することはできません。金属は遺骨を傷つけてしまうため、棺に入れることを禁止されているからです。どうしても棺に納めたい場合は、木刀を使うというのも一つの手です。

枕刀は地域によって使う刃物や置き方が異なる場合がありますので、迷った際は葬儀社に相談すると良いでしょう。

関連する記事

Related Articles

お葬式の豆知識

カテゴリで記事を探す

Category Articles