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棺の由来

現在のように火葬が主流になる以前は、遺体は土葬されることが一般的でした。

古く縄文時代には、地面に穴を掘って遺体を埋めるだけの単純な墓に「屈葬(くっそう)」、または「伸展葬(しんてんそう)」と呼ばれる方法で埋葬していました。

屈葬は身体を折り曲げるようにして遺体を納め、伸展葬は仰向けに寝かせた状態で埋葬します。これが弥生時代になると木製、または石製で作られた棺に遺体を納めて埋葬されるようになっていきました。

世界を見ると棺の材質は様々で、日本や中国では丸太を繰り抜いて作られた木製のものが多く見られますが、古代エジプトやギリシャでは石製、またその他には陶製や瓦製など、材質には様々なものが使われていました。これを見ると、その国によって調達しやすい材質が使われていることが分かります。

日本の棺の歴史

古墳時代になると、日本でも様々な材質や形状の棺が使われるようになっていきます。箱式棺や舟形棺、桶棺や座棺などの木棺から、長持形棺、家形棺などの石棺などが用いられていました。

しかし、棺を使って遺体を埋葬できるのは上流階級のみで、一般庶民には遺体をそのまま土葬するスタイルが取られていました。

この時代には、棺を使った遺体の埋葬は上流であることの証になっていたのです。この習慣は長い間続き、一般庶民にも棺が浸透するようになったのは江戸時代に入ってからです。

江戸時代に入ると一般庶民の間でも遺体を棺に納めた埋葬が普及していきましたが、当時はまだ土葬が主流であったため、寝棺よりも座棺の方が多く選択されていました。

寝棺よりも座棺の方が場所を取らなくて済むということと、棒で担いで運びやすい形態であったことがその理由だと言われています。座棺は桶の形をしていますので、「棺桶(かんおけ)」という呼び方はここに由来しています。

また座棺では、遺体の手足を折り曲げて体育座りのようにして棺に納めますが、この姿が座禅の結跏趺坐(けっかふざ)であり、この姿勢で埋葬することで成仏できると考えたという説もあります。

明治時代に入ると火葬場が普及し始めます。遺体は火葬された後は骨壺に入れて埋葬するため、埋葬の場所を気にする必要がなくなり、次第に寝棺が普及していきます。

このようにして座棺は徐々に減少していき、今では座棺を見ることは殆ど無くなりました。

 

棺の役割

現在の日本では、遺体の火葬率は99%を超えています。墓地、埋葬には厳格に法律が定められており、この法律では土葬を禁じているわけではありませんが、公衆衛生を維持する目的で、各自治体の知事が土葬を禁止する地域を指定する権利を与えています。

多くの自治体では衛生面や場所の確保などの理由によって制限を掛けており、特に埋葬場所の確保が難しい都市部では、条例によって細かい取り決めがなされています。

このため東京都や大阪府などの都心部では、土葬を禁止している地域があり、物理的に火葬を選択せざるを得ないという事情があります。

火葬にするためには火葬に対応した棺が必須であり、棺は遺体を納めて火葬場に運ぶために必要な箱というのが現実的な役割だと言えます。

棺の現在

こういった事情から、日本の棺は火葬を前提とした木製のものが使われています。

また木製のほかに、ダンボールやラタンなどがあります。木製の棺の種類は大きく分けて、合板製、合板布張り製、無垢木材製、工芸装飾製があり、一般的には順に高額になります。また、それぞれ使用される木材の種類によっても価格が変わり、桐、樅、檜の順に高額となります。お棺の価格もそのほかの加工品同様に、素材と加工・装飾のグレードによって価格が変わります。4万円くらいの加工・装飾が一切ない合板製のシンプルなお棺から檜の無垢木材を使用し、豪華な彫刻を施した200万円を超えるお棺まで、その幅はとても大きいのです。最近ではSDGsの観点から、間伐材を使用したり燃焼時間を短縮できるように配慮されたものなど、選択の内容も幅広くなっています。

このように棺には材質や形に様々なものがありますので、予算に合わせて選ぶと良いでしょう。

詳しくは、「棺の選び方」を参考にしてみて下さい。

 

このように棺は遺体を収容し、火葬場に運ぶために必要なものです。しかし一方で、故人の遺体を納めるだけでなく最後の時を過ごす大切な器でもあります。

故人が短い時間でもやすらかに過ごせるように、棺を選びたいものです。

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