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お焼香の由来

宗派ごとのお焼香の違いについては「宗派ごとの焼香の違い」でご紹介しましたが、マナーの違いはあっても目的や意味に違いがあるわけではありません。そもそもお焼香とはいったい何のためにするものなのでしょうか。「香を焚く」という行為自体は紀元前500年頃から行われているとても古い儀式です。仏教の発祥の地であるインドでは気温も湿度も高く、人々は古くから腐敗や臭気を防ぐための術として、生活に香を取り入れていました。

地元で生産される香木である白檀などを使ったお香を焚いていましたが、仏教の教祖である釈迦牟尼が修行に集中するために香を焚いていたことに由来して、徐々にお香が仏教の中に取り入れられるようになります。日本はインドほど灼熱の地帯ではなく、腐敗や臭気の対策に香を取り入れて来た歴史はありませんでした。しかし6世紀頃には仏教の伝来とともに沈香や白檀が伝わり、仏前に供えられるようになります。

その後、平安時代になると宮廷の貴族を中心に着物に香を焚きしめる習慣が広がり、香は楽しむためのものとして扱われて来ました。現在でも一部の人たちの間で趣味として香を焚く習慣がありますが、その多くはお通夜やお葬式、法事などの仏事で見られます。

 

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「焼香」と「塗香」

仏事で使う香には、「焼香」「塗香(ずこう)」の二種類があります。

「焼香」は香を火にくべて炊きますが、「塗香」は体に香を塗ります。修行や仏事を始める前に身を清め、汚れや邪気を払うことを目的として行われていました。香を身体に塗る習慣のない日本での仏事は、主に「焼香」が主流となっています。

焼香に使われる香にはいくつかの種類があり、多くは数種類をブレンドして使っています。沈香、白檀、丁子、鬱金(うこん)、龍脳(りゅうのう)の5種類が主な原料とされていますが、その他にも10種類以上の原料が調合されることもあります。

インドでは自分用の香を調合して持参していたという話があり、香を焚くことが仏の前に出るための最低限の身だしなみだったと言えます。

 

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焼香の意味

仏事で行われる焼香には、以下の3つの意味があるとされています。

 

自分の汚れを払い、体を清める

お香は仏教とともに伝来し、仏前や儀式を執り行う空間を清めるために使用されてきました。その香りには心身を清める効果があり、邪気を払って穢れを取り除くと考えられています。
お焼香の香りによって清められた心身で故人を弔うとともに、香りを捧げることも重要視されています。

仏への敬意

香を焚く行為は、謙譲の意を表します。香を焚くことで仏への敬意を示し、故人を浄土へ導いて下さいと念じています。故人が香の匂いに導かれて極楽浄土を目指せば、迷わずに到着できるだろうと考えられているのです。また香が部屋を満たすことを仏の教えに例えており、またやがて消えてしまう香の匂いに諸行無常を重ね合わせているのです。

故人の弔い

香を焚くことは、故人を弔う意味も込められています。故人の現世での行いを称え、香を手向けて成仏を祈ります。

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お焼香の方法

お焼香の方法には、立礼焼香、座礼焼香、回し焼香などの方法があります。

立礼焼香

椅子席の会場で多く見られるお焼香の方法で、立った状態でお焼香を行います。焼香台は前面に固定されており、最初に遺族のお焼香が終わった後、祭壇に向かって右側に座っている参列者から順にお焼香を行います。立った状態でお焼香を行うことから、立礼焼香と言われます。

座礼焼香

菩提寺や自宅など、坐って行うお通夜やお葬式ではお焼香も座った状態で行います。焼香台が前面に固定されている点は立礼焼香と同じですが、焼香台が低いため座った状態でお焼香を行います。行う順番は立礼焼香と同様です。

回し焼香

会場が狭く、お焼香の移動の為のスペースが確保できない時に行う方法です。お盆の上に香炉を乗せ、隣に座っている人に香炉台を順に回してお焼香を行っていきます。
行う順番は立礼焼香、座礼焼香と同様

お焼香の目的は、自分を清め、仏に敬意を払って故人を弔うことです。
お通夜やお葬式でお焼香を行う際はついついマナーに気を取られてしまいがちですが、この気持ちを持ってお焼香を行うと、行為自体を違った思いでとらえられるかもしれません。各宗派のマナーについては、「宗派ごとの焼香の違い」でご紹介していますので、参考にしてみて下さい。

 

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