お葬式の豆知識
お葬式の豆知識
家族葬のトラブル
都心部を中心に増えている家族葬。家族葬は、遺族だけで行う小規模のお葬式で、大袈裟なことはせずに家族だけで故人を見送りたいと考える人たちの中で選ばれる機会が増えています。半面、家族葬を行ったせいでトラブルを招いてしまったというケースも増えています。
ここでは、家族葬のトラブルについてご紹介します。
家族葬とは
「家族葬ってなんだろう」でもご紹介している通り、家族葬とは多くの会葬者を招かずに、ごく近しい者だけで行われる小規模なお葬式全般のことをいいます。
決まった形式があるわけではなく、遺族の考え方によって様々な形式があります。
一般的なお葬式の場合、遺族が会葬者を招いてお通夜、お葬式、出棺、火葬といった一連の流れを2日に渡って執り行います。
これに対し、一般の会葬者は招かずに遺族のみで通夜・葬儀を行う場合もありますし、「一日葬」としてすべてを一日にまとめて行ったり、家族のみで火葬式を行ったりするケースもあり、その方法は様々です。
家族葬に期待すること
多くの場合、遺族は家族葬に以下のような期待をしています。
●遺族だけでゆっくりと故人を見送れる
●多くの会葬者の対応に追われなくて済む
●費用が少額で済む
家族葬にこのようなイメージを持って選択すると、実はあとあと大きなトラブルを引き起こす原因になります。なぜトラブルになってしまうのか、順に見ていきましょう。
トラブル1)呼ばれなかった親戚や友人・知人の不満
家族葬の多くは遺族のみ、またごく親しい間柄だった親戚、友人・知人などを交えて執り行われます。葬儀場によっては「一日一喪家」限定にお葬式を行っている場合もあり、遺族のみでゆっくりと故人を見送りたいと言う期待は叶えられるでしょう。
但し、問題は誰を呼ぶかです。
「家族葬には誰を呼ぶ?」でもご紹介している通り、家族葬には呼ぶ範囲の基準があるわけではありません。そのため「呼ばれた」「呼ばれなかった」でのトラブルは増えています。
親しい、親しくないという考えは個々人によっても異なりますので、遺族がそこまで親しい間柄と思っていなくとも相手は「特に親しかったのに何も知らされなかった」と感じ、そこから絶縁状態になってしまったというケースもあります。
また、「親戚」や「友人知人」の中で呼ぶ人と呼ばない人を決めるのも至難の業です。
本当は呼びたい人がいたけれど、他の人を呼ばないと角が立つからやめておこう、などと考えてしまい、本当にお葬式に来てほしい人を呼べないこともあります。
また、地域によってはお葬式の規模が小さいことに腹を立てる親戚もいます。「●●家の葬儀がこんなにみすぼらしいなんて恥だ」などと言い出すこともあるでしょう。家族葬を行う際にはその選択の理由を相談するなどして、事前に理解を求める必要があります。
トラブル2)自宅に訪問する弔問客の対応に追われる
遺族のみで家族葬を執り行う場合、お葬式の日程などを知らせる必要はありません。多くの関係者は、訃報と同時に家族葬でお葬式が執り行われることを知ります。
多くの場合はお知らせに「故人、または遺族の意志で家族のみでお葬式を執り行うこと」、「お香典・弔電は遠慮する」旨が書かれています。
当然家族葬への参列は遠慮しますが、「せめてお線香だけでも」「お香典を渡したい」といって後日自宅へ弔問に訪れることがあります。
その場合、その都度応対しなければならなくなる上、お香典をもらってしまうと返礼の必要も出てきます。都度手配するか、多少の数を見込んで注文しておくことになってしまうのです。
これがしばらく続くと、遺族はいつまでも対応に追われることになってしまい、結局お葬式やお別れ会などで一度に会葬に来てもらったほうが楽だったというケースもあります。
トラブル3)費用が思ったよりもかかる
一般的なお葬式よりもずっと小規模な家族葬を行う場合、費用もそれに比例して少額で済むと考える人は多いのですが、実はそうでもないのです。
「お葬式の費用のはなし」でもご紹介していますが、お葬式は三大費用と言われる「葬儀一式費用」「宗教関係者費用」「飲食接待費用」で構成されています。
●葬儀一式費用
祭壇、仏衣、霊柩車、生花、供物、写真、控室など、お葬式を執り行うのに最低限必要になる道具や設備などを「葬儀一式費用」と呼びます。
●宗教関係者費用
宗教関係者とは、僧侶、神主、神父など、儀式を執り行う人、またその関係者のことを指します。日本のお葬式は9割が仏式ですが、仏式の場合はお布施、戒名代、お車代、お食事代などがそれにあたります。
●飲食接待費用
飲食接待費とは、お葬式の中で主に飲食や返礼品など、参列者に対してかかる費用のことです。人数によっての変動が大きい費用になります。
三大費用のうち、「葬儀一式」「宗教関係者費用」は会葬者の人数に関わらず必ずかかる費用です。もちろん規模や選択するグレードによって金額の変動はありますが、家族葬でも必ずかかる費用になります。そのため、家族葬を選択することによって減らすことができるのは、「飲食接待費用」のみになります。
飲食接待費は会葬者の人数によって変わりますが、会葬者はお香典を持参してきます。
つまり、会葬者にかかる費用は人数によって変動するものの、増えればその分お香典と言う「収入」も増えるという事です。家族のみで行う葬儀の場合はこの収入部分がゼロになる上に、基本的にかかる費用には変動がないとすると、実は遺族が期待するほど家族葬の費用は安くないという事になるのです。
家族葬を選ぶ理由を考えよう
こういったトラブルを避けるためには、家族葬を選ぶ際になぜ「家族葬」にしたいのか、その理由を明確にしておくことをお勧めします。
「遺族だけでゆっくりとお別れしたい」という希望がある場合には、自宅に訪問する可能性のある弔問客にどう対応するかを事前に考えておく必要があります。
もしその方が遺族を疲弊させるという判断になれば、一般的なお葬式を行うほうが良いと言う選択になることもあるでしょう。
また、「家族葬=費用が安く済む」と考える場合には、葬儀社に両方の見積もりを作成してもらうのも良いでしょう。家族葬によって減らせる部分の費用がどこなのかがより明確になるはずです。
事前の情報収集と周りの理解が、家族葬のトラブルを避ける一番の方法ではないでしょうか。