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律宗の成り立ち

律宗は、中国の南山律宗の継承者である鑑真(がんじん)が日本に伝来させ、開祖となった宗派です。

本家である南山律宗の開祖は道宣(どうせん)で、唐代に成立されました。道宣は戒律学の研究に非常に熱心で、20歳で具足戒(ぐそくかい・出家僧が順守すべき戒律)を受けて律学を修めたあと、「四分律行事鈔」などを始めとする戒律学を大成させた人物です。

この道宣の孫弟子にあたる鑑真は14歳の時に出家し、20歳で長安に入って律宗・天台宗を学んだあと、大明寺の住職となりました。その後4万人以上の人に受戒を行ったとされています。

 

そもそも仏教では、仏に帰依する証として戒律を受持することが開祖である釈迦牟尼によって義務付けられてきました。

そのため、仏教の先進国であった当時の中国でも戒律を受けなければ正式な僧として認められることができなかったのです。

しかし日本では戒律自体は伝わっていたものの正式な受戒制度がなく、戒を受けていなくても自身で宣言をすれば僧になることが出来たため、私度僧が溢れていました。

これを危惧した聖武天皇によって唐に派遣された僧たちは、受戒制度を成立させてほしいと鑑真に要請したのです。

鑑真はこの層達の要請を受けて日本に渡ることを決意しますが、天災や身内の密告による阻止、自身の失明などの度重なる災難に見舞われます。

日本における律宗の始まり

鑑真は、日本に仏教を広めるために尽力した唐代の僧として小学校の教科書にも登場するほど、日本人にとっては馴染みの深い人物ではないでしょうか。

幾度となく災難に見舞われた末、6回目の渡航でようやく渡日を果たしたエピソードはたいへん有名です。

聖武天皇の要請によって最初に渡日を計画した西暦743年から10年以上かかってようやく目的を果たした鑑真は、大宰府観世音寺にほど近い戒壇院で日本で初の授戒を行いました。

聖武天皇は既に上皇に退いていましたが、後継である孝謙天皇の勅命により、鑑真は戒壇の設立と授戒制度の確立を一任されて東大寺に戒壇院を建立します。これが日本における律宗の始まりです。

鑑真はここで5年をすごしたのち、759年に律宗の総本山となる唐招提寺で戒律を学ぶ道場を開きました。ここで76歳の天命を迎えるまで、天皇を始めとする多くの人々に受戒を授けました。

その命が尽きるまで、律宗の教えに従って多くの人たちを助けたと言われています。

また鑑真は律宗を広めるだけでなく、建築や彫刻、薬学などの優れた文化を広めた人物だとされています。

 

戒律を最も重んじる律宗

律宗はその成り立ちからも分かる通り、日本に現存する主な十三宗派の中で最も戒律を重んじる宗派です。比較的戒律のゆるやかな日本仏教の中においては、戒律を重んじることが律宗の大きな特徴となっています。

他の宗派が経典や論、座禅などを重んじるのに対し、「三聚浄戒(さんじゅじょうかい)」を基本としており、戒律の中で最も重要であると考えられています。

 

律宗の三聚浄戒(さんじゅじょうかい)

摂律義戒(しょうりつぎかい) 戒律を守ることによって救われる

摂善法戒(しょうぜんぼうかい) 積極的に善行を行うべきである

摂衆生戒(しょうじゅしょうかい)全ての人々に利益を施すべきである

 

また、本尊を特に決めていないのも大きな特徴です。
他の各宗派では本尊が定められており、それを信仰の対象としています。しかし律宗には多くの本尊があり、特に一つと決められていません。唐招提寺の金堂には盧舎那仏(るしゃなぶつ)坐像・千手観音立像・薬師如来立像・梵天立像・帝釈天立像・四天王立像などが安置されており、また壬生寺(みぶでら)には地蔵菩薩、法金剛院には阿弥陀如来が安置されています。

律宗のお葬式

律宗では奈良仏教系の華厳宗、法相宗と同じく宗教儀礼を行いません。また檀家制度が生まれる江戸時代よりも以前から存在しているため菩提寺やお墓などといった習慣もありません。

しかしその他の二宗派と同じく宗教儀礼そのものを禁じているわけではありませんので、お通夜やお葬式を行うのは自由です。

お葬式を行いたい、また墓地に納骨したいという希望がある場合は、真言宗や天台宗など他の宗派の寺院に依頼することになります。これは華厳宗や天台宗と同様です。

その際、依頼する宗派が他宗派を受け入れてくれるかどうかを事前に確認する必要があります。

最近では宗派を問わず受け入れてくれる寺院も増えていますが、直接寺院に依頼する前に葬儀社に詳細を問い合わせてみると良いでしょう。

また、読経を必要としない火葬式や直葬なども選択肢の一つになるかもしれません。

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