facebookでシェア twitterでシェア
なぜ「ゼロ円葬なのか」

経済的な余裕がなく、お葬式をあげることも、お墓を用意することもできないという深刻な問題を抱える高齢者が増えています。生活困窮者の対象の半数が高齢者と言われ、現役時代に年収が1000万円を超えていた高収入世帯が、老後に生活困窮に陥るケースも少なくないと言われます。

これは少子高齢化という社会構造の変化や、年金制度の改正が大きく影響している結果と言えます。経済的に余裕が無い中では残された家族が生活することに重点が置かれるため、お葬式のような儀式にお金をかけられないばかりか、遺骨を祭ることもできないという深刻な状態に陥る家庭が増えています。

そのような中、「密葬・直葬」「送骨」などとともに、「ゼロ円葬」という言葉が注目されるようになったのです。

 

zeroenso01

「ゼロ円」の範囲

「ゼロ円葬」と聞くと、お葬式をゼロ円であげられると勘違いしてしまう人も多いでしょう。

しかし最近言われるようになった「ゼロ円葬」とは、一つは生活保護受給者が国の補助を受けて行うお葬式のことで、「生活保護葬」「福祉葬」「民生葬」などと呼ばれるものです。

インターネットで検索すると、色々な葬儀社が「ゼロ円葬承ります」という広告を出していますが、ほとんどが「生活保護葬」を取り扱っているといった内容です。

生活保護葬

生活保護受給者はお葬式ができない?」でもご紹介していますが、日本には「葬祭扶助制度」という生活保護法があり、国民が最低限健康で文化的な生活を送るために国が保護する制度があります。

火葬・埋葬はこの法律の中で「最低限の文化的な生活」の対象となっており、一定の補助金が支給されるのです。そのため、この費用の範囲内であれば実質の負担が無く、「ゼロ円葬」と呼ばれるようになった所以はそこにあります。

しかし、この補助の対象になっているのは以下の項目になります。

1)検案

2)遺体の運搬

3)火葬または埋葬

4)納骨その他葬祭のために必要なもの

「その他葬祭に必要なもの」の解釈については意見の分かれるところではありますが、これを見る限り、通夜や告別式、戒名などは対象にならないため、対応範囲は一般に言われる「直葬」や「密葬」をイメージすると良いでしょう。

葬祭扶助で対応する「納骨」とは、遺骨を骨壺に納めるまでのことを指しています。お墓に納める費用や儀式については含まれていないため、納骨だけを考えても完全にゼロ円にはならないため、注意が必要です。

 

zeroenso03

献体

もう一つ、大学の医学部に検体するとお葬式の費用が「ゼロ円」になると考える人がいます。

献体したらお葬式はどうなる?」でご紹介していますが、医学の発展のために役立てるべく、自分の遺体を大学の医学部に提供することを「献体」と呼びます。

もともとは社会的な貢献を目的に行う行為ですが、最近では葬祭関連の費用負担を軽減する目的で献体を申し出る人が急増しているようです。

この場合も、大学側で負担するのは遺体の搬送と火葬費用のみです。お葬式に関連する費用は遺族側が負担しなければいけないため、「生活保護葬」と同様に「直葬」や「密葬」をイメージすると良いでしょう。但し献体の場合は通常でも1~2年は遺体が返却されないため、納骨や法要の目途が立ちにくいことを念頭に入れる必要があるでしょう。

どちらも活用するには条件があり、それを満たさなければ制度を利用することはできません。

「ゼロ円葬」という言葉が独り歩きしている感がありますが、誰でも利用できるものではないという事は知っておくと良いでしょう。

「ゼロ円」というわけにはいきませんが、国民健康保険、または社会保険に加入している場合は「葬儀費用」「埋葬費用」の一部を補助する仕組みがありますので、「葬儀費用は補助が受けられる」を参考にしてみて下さい。

関連する記事

Related Articles

お葬式の豆知識

カテゴリで記事を探す

Category Articles