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おかみそりの意味と由来

おかみそりとは「お剃刀」と書き、髪を剃る儀式のことをいい、帰敬式(きけいしき)とも呼ばれます。

お葬式に限って行われる儀式の一つで、仏に帰依する際の出家の儀式にならったものです。

仏門に入る際は厳しい受戒がありますが、剃髪もその一つです。出家の証として頭髪を剃り、生涯仏に使える決意を表します。

ではなぜ僧侶はみな髪を剃るのでしょうか?

これは仏教の教祖である釈迦牟尼が出家の際に髪を剃ったことに由来しています。古代インドでは、頭を剃ることは重罪の証として最も恥とされていました。しかし釈迦牟尼は出家する際、自ら刀を持って髪を切り、あえてその姿を選びました。これには世俗的な束縛や、物質的な執着から解放されるという意味が込められていたのだと考えられています。

弟子たちはこれにならって、みな出家の際に剃髪しました。

これに由来し、仏教では出家の儀式の際に剃髪が行われるようになったのです。

 

お葬式で「おかみそり」が行われるのは、故人が仏の弟子として浄土に旅立つための儀式だと言えるでしょう。

 

なぜ浄土真宗では「おかみそり」を行うのか?

さてこのおかみそりの儀式ですが、お葬式で行うのは浄土真宗のみで、その他の宗派のお葬式では行われません。この儀式自体は宗派に関わらず仏教徒が出家の際に行われるものですが、お葬式で行うのは浄土真宗のみです。これには浄土真宗の教えが深くかかわっています。
人は亡くなると四十九日間の十王の裁きを受け、浄土へ召されるとされ、これはどの宗派でも共通しています。つまり、十王の裁きによっては浄土に召されない可能性もあるということです。
これには生前の行いが深くかかわっているため、生前に信仰を深め、善行を重ねることが重要とされているのです。

ただし浄土真宗だけは、少し考え方が異なっています。浄土真宗の中心的な考え方として、「往生即成仏(おうじょうそくじょうぶつ)」があり、それはその言葉の通り「人は往生すれば即座に仏になる」という考え方です。往生する=亡くなると同時に仏になる、ということになりますので、故人の死は出家と同じ意味を持ち、十王の裁きを受ける必要はありません。
そのためお葬式の中で出家の儀式である「おかみそり」を行い、仏の弟子となった故人が浄土へ旅立つのを見送るのです。

 

剃髪しない僧侶もいる

このように説明をすると、浄土真宗では剃髪を特に重んじているように感じるかもしれませんが、実は浄土真宗では剃髪しない僧侶も多くいます。

仏教には大きく分けて小乗仏教大乗仏教がありますが、厳しい戒律を守り、修行を積まなければ救われないと説いている小乗仏教は戒律もたいへん厳しいものになっています。

これに対して大乗仏教は、「信仰すれば誰もが救われる」と説いています。浄土真宗はこの大乗仏教にあたるため、戒律はそこまで厳しくありません。

そのため剃髪が厳密に義務付けられておらず、剃刀を3回頭にあてる「おかみそり」の儀式を行うことで、剃髪のかわりとすることも多くあります。浄土真宗本願寺派の本山である西本願寺では、成人の日に新成人たちにおかみそりの儀式を行っており、この際も僧侶が剃刀を3回頭にあてるのみでおかみそりの儀式が行われています。

おかみそりの行い方

お葬式で行われる「おかみそり」も、剃刀を髪に当てるだけの儀式です。出家の儀式の際は、おかみそりの儀式の際に他の宗派の戒名にあたる法名を授かります。お葬式でも同じように儀式を行いますが、流れは以下の通りです。

 

  1. 僧侶が剃刀を手に取って、三帰依文を唱和する
  2. 棺の窓を開ける
  3. 剃刀を故人の頭に三回あてる
  4. 棺の窓を閉める
  5. 法名を授ける

 

浄土真宗のお葬式でもう一つ特徴的なのは、引導がないことです。これも往生即成仏の考えに基づいています。

おかみそりが行われる地域

さて、このように浄土真宗のみで行われるおかみそりですが、歴史的な背景から浄土真宗の教徒が多い西日本のお葬式ではよく見られる儀式です。特に滋賀、岐阜、島根、広島では比較的多いと言えるでしょう。

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