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島根県のお葬式が特徴的な理由

島根県は大国主命(おおくにのしのみこと)を祀る出雲大社のおひざ元であることから、葬送習慣にも神道の思想が色濃く反映されているのが特徴です。
多くの地域では仏教の思想と地域の慣習がまざりあってお葬式の儀式が成り立っていますが、こと島根に関してはそこに神道の思想が色濃く入り込んでいるのです。

仏教では「死」は成仏への入り口であり、旅立ちと考えられています。これに対し、神道では死は穢れ(けがれ)とされています。勘違いされることも多いですが、穢れとは、「気枯れ」とも書き、「汚れ」とは別の意味です。人が死や血を伴うときに気枯れる、つまり気が枯れて気力が失われている状態のことを指します。この思想が葬送習慣に色濃いのが島根県の特徴です。

さらに、出雲大社の存在がお葬式文化全体に影響を与えています。出雲地方の人々は、死という穢れを神聖な空間から遠ざけることを重視し、そのための作法が多岐にわたっています。

大安のお葬式は避ける

全国的に“友引”の日にお葬式を避ける習慣は一般的ですが、島根県ではそれに加えて“大安”の日も避けるという特有の風習があります。大安は一般的に最も縁起が良い日とされますが、出雲地方ではこの日をお葬式に使うことは縁起を損なうと考えられています。

神道では死を穢れとみなし、それを日常生活や神聖な行事から切り離すべきだと考えます。大安のお葬式を避けることは、地域住民が縁起の良い日を大切にし、その神聖性を守ろうとする意識の現れといえるでしょう。

独特な“忌中”のしるし

島根県では、不幸があった家庭の玄関に“忌中”の半紙を貼る代わりに、一対の竹を門の両脇に立てかける風習があります。この竹は門松に似た形式をとり、死者の家を穢れから守ると同時に、周囲に不幸があったことを知らせる役割を果たします。

竹を用いる理由は、神道における竹の持つ清浄なイメージにあります。竹は古来より神聖なものとして扱われ、穢れを祓う力があると信じられてきました。そのため、忌中の印として竹を使用することは、出雲地方における神道的価値観と深く結びついていると言えます。

現在ではこの風習を目にする機会は少なくなりましたが、一部の地域ではまだ根強く残っています。

広島にお茶を買いに行く”

島根県出雲地方には、身内に不幸があったことを“広島にお茶を買いに行く”と表現する独特な言い回しがあります。この言葉には、神道的な死生観が背景にあります。

神道では “死”という言葉を口にすることを避ける傾向があります。そのため、不幸を間接的に表現するための言い回しとして、このような慣用句が生まれたと考えられます。

ここでいう“広島”とは、広島県の弥山を指しているとされています。弥山は厳島神社がある宮島の中央に位置する山で、出雲地方では亡くなった方の魂が集まる霊山と考えられてきました。このように、宗教的背景が地域の慣用句に深く影響を与えている点が興味深い特徴です。

薄い赤飯をふるまう

島根県のお葬式では、精進落としの席で薄い赤飯が振る舞われることがあります。赤飯は通常お祝い事に使われるイメージが強いですが、島根県ではお葬式の場で提供される特別な意味があります。
赤は古来より魔除けの色とされ、日本各地で穢れを祓う象徴として用いられてきました。島根県の赤飯が薄い色で作られるのは、祝い事ではなく、故人を偲びながらも魔除けを意識した控えめな表現を反映していると考えられます。

特に長寿を全うした故人の場合、その人生を祝福する意味も込められています。出雲大社の影響を受けたこの地域独自の文化は、死を穢れとしながらも故人の生に感謝する心が表れたものと言えるでしょう。

浄土真宗が多い

島根県西部の石見地方では、浄土真宗が特に盛んです。この地域では、浄土真宗の教えに基づいたお葬式が行われ、念仏を唱える“講”の人々がお葬式に集まることが一般的です。浄土真宗のお葬式では、故人の冥福を祈るとともに、生者が仏教の教えを再確認する場としての役割があります。また、教本を見ずに暗唱できる人が多いことも、この地域特有の特徴です。

さらに、浄土真宗では遺骨を土に直接埋めるという風習が残る地域もあります。これは、浄土真宗の教えが人々の日常生活に深く根付いていることを物語っています。
島根県のお葬式は、地域ごとの文化や宗教観が反映された独特の風習に彩られています。大安のお葬式を避ける習慣や竹を用いた忌中のしるし、赤飯の供物や浄土真宗の影響など、他地域では見られない特色が数多く存在します。

これらの風習は、島根県の人々が長い歴史の中で培ってきた死生観や信仰心の表れです。島根県のお葬式に参列する際には地域の伝統を理解し、それを尊重することが重要です。

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