お葬式の豆知識
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一膳飯とは
一膳飯(いちぜんめし)とは、茶碗に盛り飯をして、真ん中に箸を立てる一善限りの飯のことです。一杯飯(いっぱいめし)、枕飯(まくらめし)とも呼ばれます。一膳限りの飯を出すことは、この世に別れを告げてあの世へと旅立つ死者への作法とされています。
ここでは、一膳飯の由来や作法についてご紹介します。
一膳飯の持つ意味とは
茶碗に山盛りにご飯を盛って、真ん中に箸を立てる「一膳飯」は、誰でも目にしたことがあるのではないでしょうか。
もともと一膳飯は、二膳や三膳はない、一善限りということで、旅立って二度と戻らない相手との別れの膳で出されていた古くからの習わしです。これは嫁入りや独立の際にも行われていた作法でした。
このように、一膳飯は最後の食事という意味合いがあることから、「死者のこの世での最期の食事」としてお葬式の作法に使われるようになりました。
家庭で食事をとる際に、山盛りにご飯をよそうのは縁起が悪いとしつけをされたことがある人もいるでしょう。「高盛飯」は婚礼でも使われることがありますが、最後の食事と言う由来と、死者を連想させるということから、一般的に食事の作法としては忌み嫌われるものになっています。昔は一口だけでも二膳目を食べるようにとしつけを行っている家庭もありましたが、時代の流れとともに最近ではそういった考えは薄れてきました。
一膳飯の作り方
一膳飯については宗派や地域によっても異なりますが、ここでは一般的な一膳飯の作り方についてご紹介します。
まず一膳飯を作るときは、新しく一合の白米を炊きます。これは、一膳飯は死者のために用意したものであって、生者が食べるものではないという考え方から来ています。炊きあがったお米は一粒ものこさず使うようにしましょう。
茶碗二つに多めのご飯をよそい、二つをギュッと合わせます。その後片方をゆっくりと外すと、盛り上がった綺麗な山の形になった一膳飯ができます。その中央に一膳の箸を揃えて垂直に立てれば、一膳飯の出来上がりです。山の高さは高ければ高いほど良いとされています。
茶碗や箸は、故人が生前使っていたものを使うようにしましょう。
但し、地域によっては箸の高さを合わせないようにしたり、十字にしたり、お米は白米ではなく玄米を使うこともあるようです。
一膳飯の供え方
一膳飯は、仏式では故人の枕元に供える枕飾りの一つです。白木の小机を用意し、香炉、蝋燭立て、花瓶、枕団子、一善飯、水、鈴(リン)を並べます。(枕飾りとは)
枕飾りは故人が亡くなってからお通夜やお葬式が始まるまでの間、安置した場所で故人の枕元に供えます。
茶碗割の儀式
お通夜とお葬式が終わった後、一膳飯で使った故人の茶碗を割る「茶碗割り」の儀式を行います。これは、故人がこの世に未練を残さぬよう、使っていた茶碗を割ることで安心してあの世へ旅立ってほしいという思いが込められた儀式です。
一膳飯で使用したご飯は、箸と枕飾りで使用した枕団子とともに、故人の棺に入れて出棺します。
これはあの世へ旅立つ時のお弁当のようなものであると言われています。冥途にたどり着くまでにお腹を空かせないよう、また、お腹を空かせた人がいたら分け与えて徳を積めるようにとの思いが込められています。
但し、最近では茶碗割の儀式も形式化し、徐々に無くなる傾向にあるようです。
宗派による違い
一膳飯は仏式の作法ですので、神式やキリスト教式のお葬式では行いません。また、仏式であっても、浄土真宗では一膳飯は行ないません。
浄土真宗では、人は死と同時に浄土に召されるとされているため、旅立つまでこの世に魂があるという考えがないからです。