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釘打ちの儀とは

お通夜、お葬式のすべての儀式が終わった後、故人と最後のお別れを行います。遺族や参列者が棺に生花を入れながら、手を合わせてお別れの言葉を口々に述べていきます。その後、棺の蓋を閉じて出棺になりますが、その蓋を釘で打ち、開かないように固定するのが「釘打ちの儀」です。

釘打ちは遺族の手で行われ、喪主を始めとして、故人と関係の深い順に一人2回ずつ釘を打つのがしきたりです。
死者は、この世とあの世との境である「三途の川」を渡ってあの世へ旅立つとされています。三途の川を渡る故人を見送るという意味で以前は川辺の石に見立てたこぶし大の石で釘を打ちつけていましたが、最近では金槌を使用することも増えています。

この行為自体は儀式ですので、事前に葬儀社などによってある程度撃ち込まれている釘の最後の打ち込みを遺族が行うという形になります。

 

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釘打ちの儀の由来

この儀式が行われるようになった背景については諸説ありますが、民族的な慣習という解釈が一般的で、主に以下の理由があると考えられています。

物理的な理由

昔は故人を収めた棺を人の手で墓地まで運ぶ「野辺送り」が一般的でした。今のように舗装されていないあぜ道を牛車や人力車で運ぶ上、棺の蓋も今のようにしっかりと固定される形状ではなく、一枚板を上に乗せるような形であったため、運ぶ途中で蓋がはずれてしまわないよう釘で固定するという物理的な事情があったと考えられます。

死を封じ込めるという考え

古来より日本独自の信仰として広まっていた神道では、「死」を穢れとして扱われていた為、死者の魂は荒ぶる魂、すなわち死霊となる。というのが日本人にとって一般的な考え方であったことと、以前は日本でも土葬が主流であったため、死者を封印するという意味が込められていたと考えられます。

最近は火葬が主流となったため、死者を封印する必要が無くなりました。

故人への想いを断ち切る儀式

大切な家族を失ったとき、遺族がその事実を受け入れるまでには時間がかかると言われています。「釘打ちの儀」は故人の棺に石で釘を打ち、開かないようにするというある意味残酷とも言える儀式です。石で釘を打ちつけながら故人が帰らぬ人であることを遺族が認識するために行われていたという考え方もあります。

荒療治ではありますが、日本ならではの「グリーフケア」の一つだったのかもしれません。

死を穢れとして考えたり、「釘打ちの儀」自体を行わない宗派があることを考えると、民族的な慣習とはいえ宗教色がゼロではないと言えるでしょう。

死を汚れたものとして考えたり、「釘打ちの儀」自体を行わない宗派があることを考えると、民族的な慣習とはいえ宗教色がゼロではないと言えるでしょう。

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釘打ちの儀が行われている地域

釘打ちの儀を行うかどうかについては地域色もあり、中部から近畿、西日本ではあまり見かけられなくなっています。しかし、東北や北海道では今でも色濃く残っており、必ず行われるという事はないものの、慣習を重んじる地域や年代では大切な最期の儀式の一つとしてとらえられているようです。

海外での釘打ち

日本では火葬が主流ですが、海外では多くの国で土葬が行われています。「死者の霊」というよりも「ゾンビ」のような悪霊に対する恐れがあるため、釘打ちでなくても蓋があかないように布で巻いたり、鍵を付けたりして棺の蓋を開かないようにする習慣は多くの国で見られます。但し、死者の復活を信じるキリスト教の場合は棺の蓋を固定することは無いようです。

最近では棺の機能が向上し、蓋が簡単に外れるようなことは無くなりました。また、火葬が主流となり死者を封印する必要も無くなったため、釘打ちが自然に行われなくなって行ったと想像できます。

しかし、死者との別れの儀式として考えると、「釘打ちの儀」は大切な最期の儀式と言えます。

釘打ちの習慣がない地域の人が、他の地域のお葬式に参列した際に「釘打ちの儀」を見ると驚くかもしれません。

しかし、釘打ちには様々な由来があり、人によっては大切に考えている最後の儀式であることを知っておくと、儀式の見方が変わるかもしれませんね。

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