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仏教徒は年々減少している

文化庁が行っている宗教統計調査によると、令和元年の12月31日現在の仏教系の信者は4800万人程です。平成22年度には7800万人ほどいたことを考えると、この10年で3000万人も仏教系の信者が減少したことになります。
この数字は宗教団体に問い合わせたもので、信者の定義が教団によってバラバラであるため、実数とは乖離していると考えられます。そのため現実にはもっと少ない可能性があり、これは仏教に限らず日本国民全体の宗教離れが影響していると言えるでしょう。

日本の人口が1億2千万人程度ですから、仏教徒は4割程度しかいないわけです。
それなのになぜ、お葬式の9割近くが仏式になるのでしょうか。

 

寺請制度の名残り

日本のお葬式の9割が仏式であることの理由の一つとして、江戸時代に実施された寺請制度が考えられます。
寺請制度とは、江戸時代の初期に江戸幕府によって宗教統制を目的に施行された制度です。同時にキリスト教の布教を禁止する禁教令も施行されたことから、一番の目的はキリスト教を禁止することにあったと言われています。

全ての人間がいずれかの寺院に所属する、いわゆる「檀家」になることが義務付けられるもので、所属した証として「寺請証文」を受け取ることができる仕組みです。
この証文があることで、キリスト教徒ではないことを証明することができるとともに、全ての国民が名目上は仏教徒となったわけです。

檀家になると寺院にお布施を納める義務が発生する代わり、寺院は檀家に対してお葬式や法要などを執り行ってくれます。

この際に、国民のお葬式は全てが仏式で執り行うことになったのです。

この制度は1871年に明治政府によって廃止されましたが、それまで檀家だった人たちは自主的に離檀しない限り、そのまま檀家を継続する形になりました。檀家制度は世代をまたいで引き継いで行かれるため、その名残がお葬式の9割が仏式である理由の一つとして考えられます。

現在は仏教徒の減少と共に檀家離れが進み、無宗教でのお葬式も少しずつ増えています。

神式の「穢れ」という考え方

お葬式のほとんどが仏式で行われるもう一つの理由として、神道では死を「穢れ(けがれ)」と捉えているからだという考えがあります。

穢れとは、「汚れ」ではなく、気が枯れる、つまり気力を失った状態を差しています。

仏式のお葬式は寺院で行います。「死」は浄土へ行って仏となるための唯一の方法であり、導師が引導を渡してあの世に送り出すと言う、前向きに捉える発想があるためです。遺族は故人が無事に浄土へ行けるよう、お葬式という儀式を通して導師と共に念じます。

これに対し、神道では死は穢れであるという考え方があるため、神社でお葬式を行うことができません。神聖な場所である神社に、死という穢れを持ち込むことは出来ないからです。

神社では積極的にお葬式を執り行わないため、儀式としてのお葬式は寺院が中心となって行ってきました。つまり、もともとお葬式自体を神式で行う人は少なかったのだと言う考えです。

 

ほとんどの人が「なんとなく」

このように、お葬式の9割が仏式である理由はいくつか考えられますが、実はほとんどが「なんとなく」仏式を選択していると言うのが実情かもしれません。

神仏習合の日本では、年始には神社へ初詣に行き、年末には寺院の鳴らす除夜の鐘を聞きながら年越しをします。七五三などのお祝い事やお祓いは神社で行い、人生の最期には仏式でお葬式を行います。

これ自体はとても自然に私たちの生活に入り込んでいて、あまり疑問に感じることもないでしょう。

「八百万の神」という言葉があるように、日本では神様はたくさんいるのだという思想が一般に根付いています。そのため、複数の宗教の思想を自然に受け入れることができる国民性があると言えます。

江戸時代から代々仏式でお葬式をしてきたこともあり、仏式のお葬式を伝統的な儀式と捉えている人が多くいるのも理由の一つです。

お葬式は亡くなった人間自身が行うことができなく、残された遺族が行うものです。遺言などで遺志が遺されていない限り、親族縁者の手前もあって昔ながらの方法を選択していると言うのが現実的な理由かもしれません。

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