お葬式の豆知識
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受戒とは
受戒(じゅかい)とはその言葉の通り、仏に帰依することの証として戒律を受けることを差します。日本のお葬式はその9割が仏式と言われますが、この受戒を模した儀式が多く見られます。
ここでは、受戒の意味と由来についてご紹介します。
受戒の持つ意味
受戒は仏教において、仏門に入り仏に帰依することを誓約する儀式を差します。受戒の「戒」とは戒律を差し、仏の弟子となるためのルールとなっています。
教祖である釈迦牟尼は、出家の際に俗世への執着を捨てる意味を込めて剃髪し、ぼろ布をまとった身一つで出家したと言われています。その後、僧が集団で生活するためのルールのようなものも加わり、現在の戒律が生まれました。
出家、在家を問わず授かるものですが、その内容は出家と在家では異なります。在家に比べ、出家する際の戒律はより厳しいものになります。
戒律の種類
仏に帰依するために守らなければならない戒律には、五戒、八戒、十戒の三種類があり、それぞれ対象が違います。仏門に入る場合、在家と出家を選ぶことができますが、在家と出家では守るべき戒律が異なるのです。五戒、八戒は在家信者に向けて、十戒は出家する場合の戒律となります。
在家信者に向けた戒律
在家信者は、五つの戒律である五戒を守らなければなりませんが、それに加えて守らなければならない戒律を加えた八戒があります。
●五戒
不殺生戒(ふせっしょうかい):生命を奪わない
不偸盗戒(ふちゅうとうかい):他人のものを盗まない
不邪淫戒(ふじゃいんかい):不道徳な性行為をしない
不妄語戒(ふもうごかい):嘘をつかない
不飲酒戒(ふおんじゅかい):酒を飲まない
●八戒
五戒に加えて、以下の戒律を毎月6日間、一日一夜行います。
香油塗身戒(こうゆずしんかい):飾りや香料を身に付けない
歌舞観聴戒(かぶかんちょうかい):歌や音楽などの娯楽を楽しまない
高広大床戒(こうこうだいじょうかい):ベッドや布団に寝ない
非時食戒(ひじしきかい):午後は食事をしない
出家信者に向けた戒律
●十戒
八戒にさらにもう一つ戒律が加わります。
捉金銀宝戒(そくこんごんほうかい):お金や金銀など、個人の資産を所有しない
受戒の意味
仏教には、厳しい戒律があります。これは仏門に入った者が守らなければならないルールで、仏の弟子になることへの心構えや、集団生活を乱さないようにするための規則などが含まれています。受戒によって、信者や僧侶は仏教の教えに従うことを誓い、心身の浄化や悟りへの道を進むとされています。
日本での受戒
日本で正式な受戒を行ったのは、鑑真(がんじん)です。
仏教では開祖である釈迦牟尼によって、仏に帰依する証として戒律を受持することが義務付けられてきました。しかし日本では戒律自体は伝わっていたものの正式な受戒制度がなく、戒を受けていなくても自身で宣言をすれば僧になることが出来たため、私度僧が溢れていました。そこで時の天皇であった聖務天皇が仏教の先進国であった中国に僧を派遣し、受戒制度を成立させるように命じました。
中国に派遣された僧たちは受戒制度を成立させてほしいと要請し、それに応じたのが後に律宗の開祖となる鑑真です。
鑑真はこの層達の要請を受けて日本に渡ることを決意しますが、天災や身内の密告による阻止、自身の失明などの度重なる災難に見舞われます。最初に渡日を計画した西暦743年から10年以上かけてようやく目的を果たした鑑真は、大宰府観世音寺にほど近い戒壇院で日本初の授戒を行いました。
受戒の儀式
受戒の儀式は宗派によって呼び方が異なり、授戒会(じゅかいえ)、または帰敬式(きけいしき)、得度(とくど)などと呼ばれます。
以下に、授戒会の流れをご紹介します。
●説戒(せっかい)
戒律について、また朝晩の務めなどの説教を聞く。
●壇上礼(だんじょうらい)・仏祖礼(ぶっそらい)
釈迦牟尼から続く歴代の祖師に礼拝の行を行う
●懺悔道場(さんげどうじょう)
いままでに積み重ねた罪を悔い改め、仏に小罪無量(しょうざいむりょう)を唱える。
●教授道場(きょうじゅどうじょう)
仏の弟子となった証明である十六条戒と血脈を授かる
●正授道場(しょうじゅどうじょう)
生前戒名を授かる
お葬式で行われる受戒
お葬式の中で行われる儀式に「おかみそり」というものがあります。浄土真宗のお葬式に限って行われる儀式の一つで、仏に帰依する際の出家の儀式にならったものです。
この儀式自体は宗派に関わらず仏教徒が出家の際に行われるものですが、他の宗派が死後四十九日間は十王の裁きを受け、その裁きによって浄土へ召されるとしているのに対し、浄土真宗は「往生即成仏(おうじょうそくじょうぶつ)」、つまり、人は亡くなると同時に仏となると考えられています。
そのため、浄土真宗のお葬式でのみ、お葬式の中で受戒を模した儀式が行われるのです。