お葬式の豆知識
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国葬とは
銃撃によって亡くなった安倍元総理のお葬式が、国葬の形で行われることで話題になった「国葬」。
日本で国葬が行われるのはまさに55年ぶりと言われており、ほとんどの国民が国葬については良く知らないというのが現状です。ここでは国葬の意味と、その歴史についてご紹介します。
国葬の意味
国葬とは、国家に対して多大な功労のあった人のお葬式を、国家の儀式として行うことです。お葬式には種類があり、大きく以下に分類されます。
種類 | 喪主 | 施主 | 会葬者 | 費用負担 |
一般葬 | 遺族 | 遺族 | 家族、親族、知人・友人、一般 | 遺族 |
家族葬 | 遺族 | 遺族 | 家族中心にごく親しい者 | 遺族 |
密葬 | 遺族 | 遺族 | 家族中心にごく親しい者 | 遺族 |
直葬 | 遺族 | 遺族 | 家族中心にごく親しい者 | 遺族 |
社葬 | 遺族 | 会社 | 家族、親族、知人・友人、一般、会社関係者 | 会社 |
合同葬 | 遺族 | 遺族と会社・団体など | 家族、親族、知人・友人、一般、会社関係者、団体関係者 | 遺族・会社・団体関係者 |
国葬 | 遺族 | 国家 | 家族、親族、知人・友人、一般、国内外のVIP | 国家 |
国葬は喪主が遺族であることは他のお葬式と変わらないものの、会葬者に国内外のVIPまでが含まれる点で他のお葬式とは大きく異なります。また、費用負担は国になり、国費を使って行われるのが大きな特徴です。国葬の対象は皇族や政治家、軍人、学者などです。
日本で国葬が行われるのはまさに55年ぶりで、多くの国民が国葬を知らないのは当然のことと言えます。
国葬の歴史
日本で一番初めに行われた国葬は、1883年に亡くなった右大臣の岩倉具視でした。
戦前には国葬に関する「国葬令」が定められており、1926年に公布され、1947年に失効しています。
この国葬令が定められるまでの間、国葬は法制化されておらず、先例や慣例によって行われていましたが、それに則って法令化されたのが国葬令です。この間、国葬は天皇の勅令によって行われており、天皇や皇后、皇太子、皇太子妃などの皇族、及び国家に功労があった者の葬儀として行われていました。
戦後に総理大臣経験者として国葬されたのは吉田茂元総理一人のみで、今から55年前に遡る1967年10月に行われました。この際、国葬は臨時閣議によって決定され、日本武道館で行われています。
国葬令の失効後、日本には国葬を定める法律が無いため、政治家の葬儀を国葬で行う場合は政府が主導して行ってきたのが現状です。
吉田元総理の国葬も、安倍元総理と同じく閣議決定されたものでした。また1975年に行われた佐藤栄作元総理の葬儀は、「国葬」ではなく「国民葬」として行われた歴史があります。
以下は、戦前に行われた主な国葬の一覧です。
戦前の国葬一覧
施行 | 年 | 氏名 | 役職 |
先例・慣習により | 1883年 | 岩倉具視 | 右大臣 |
1887年 | 島津久光 | 右大臣侯爵 左大臣 | |
1891年 | 三条実美 | 公爵 太政大臣 | |
1895年 | 熾仁親王 | 陸軍大将 参謀総長 | |
1895年 | 能久親王 | 陸軍大将 近衛師団長 | |
1896年 | 毛利元徳 | 公爵 参議 旧山口藩主 | |
1898年 | 島津忠義 | 公爵 参議 旧鹿児島藩主 | |
1903年 | 彰仁親王 | 元帥 陸軍大将 | |
1909年 | 伊藤博文 | 公爵 内閣総理大臣 元老 | |
1912年 | 明治天皇 | 天皇 大喪 | |
1913年 | 威仁親王 | 元帥 海軍大将 | |
1914年 | 昭憲皇太后 | 皇太后 大喪 | |
1916年 | 大山巌 | 公爵 元帥 陸軍大将 内大臣 | |
1919年 | 李熈 | 李太王 | |
1922年 | 山縣有朋 | 公爵 元帥 陸軍大将 内閣総理大臣 元老 | |
1923年 | 貞愛親王 | 元帥 陸軍大将 内大臣 | |
1924年 | 松方正義 | 公爵 内閣総理大臣 元老 | |
1926年 | 李坧 | 李王 | |
国葬令 | 1927年 | 大正天皇 | 天皇 大喪 |
1934年 | 東郷平八郎 | 侯爵 元帥 海軍大将 | |
1940年 | 西園寺公望 | 公爵 内閣総理大臣 元老 | |
1943年 | 山本五十六 | 元帥 海軍大将 連合艦隊司令長官 | |
1945年 | 載仁親王 | 元帥 陸軍大将 参謀総長 |
戦前に行われた国葬の中には、日本人だけでなく外国人もいました。いずれも大韓帝国の皇帝経験者で、日本に多大な功績を残したことから国葬として扱われています。但し、これは日本国内でなく韓国のソウル市で行われています。
戦後、国葬令の失効後に行われた国葬は以下の通りです。
戦前の国葬一覧
年 | 氏名 | 役職 |
1951年 | 貞明皇后 | 皇太后 |
1967年 | 吉田茂 | 内閣総理大臣 |
1989年 | 昭和天皇 | 天皇 大喪の礼 |
この一覧からも分かる通り、国葬としては33年ぶり、内閣総理大臣経験者としては55年ぶりという事になります。戦後の総理大臣経験者の多くは、国葬ではなく国民葬、または政党主催の合同葬として行われて来ました。
海外で行われた国葬
外国人の国葬が日本で行われることがあるのと合わせて、日本人の国葬が海外で行われることもあります。その土地で多大な功績を残したことから、その国で国葬が行われました。
年 | 国 | 氏名 | 地位 |
1934年 | オランダ | 安達峰一郎 | 外交官 |
1963年 | ユーゴスラビア | 近藤常子 | 看護師 |
1992年 | ブータン | 西岡京治 | 農業指導者、植物学者 |
2011年 | トルコ | 宮崎淳 | NPO法人「難民を助ける会」メンバー |
国葬の現実
国葬は海外の有力者も参列することから、国家のイベントとして取り扱われます。そのため費用も決して少額ではなく、おおよそ1億~2億円ほどかかると言われています。
国葬はその全額が国費で賄われるため、批判や反対の声があがるのも事実です。
しかし、国葬とはいえ故人との別れの場であることは間違いなく、その死を悼み、遺族へのお悔やみの気持ちを持つことを忘れないようにしたいものです。