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玉串奉奠とは

神道のお葬式において、参列者が祭壇に玉串(たまぐし)を捧げる儀式を「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」と呼びます。この儀式は、仏式葬儀での「焼香」にあたるもので、亡くなった方に哀悼の意を示し、神様に祈りを捧げる行為です。神道のお葬式は「神葬祭(しんそうさい)」と呼ばれ、玉串奉奠はその中心的な儀式として行われます。

玉串奉奠は、お葬式だけでなく、結婚式や地鎮祭、お宮参り、七五三など、神道のさまざまな儀式においても執り行われるものです。中でもお葬式の場では、故人の魂を慰めるとともに、参列者が心を込めて神様にその思いを届けるという意味合いが強くなります。

参列者は神職の指示に従って一人ずつ祭壇の前に進み、玉串を丁重に奉納します。このときの作法には独特の所作があり、静粛で厳かな雰囲気の中で執り行われます。仏教の焼香に比べると参列者にとってなじみが薄い場合もありますが、神道の儀式においては欠かすことのできない大切な行いです。

なお、玉串奉奠は「玉串拝礼(たまぐしはいれい)」と呼ばれることもありますが、どちらも同じ儀式を指します。

 

玉串の意味

玉串とは、榊(さかき)の枝に「紙垂(しで)」と呼ばれる白い紙を垂らし、麻の紐などで結びつけたもので、神前に捧げるための神聖な供物です。この榊は常緑樹であることから、生命力の象徴とされ、神様と人との橋渡しをする神聖な媒介としての役割を担っています。

 

玉串の語源については複数の説があり、古来より神に手向ける「手向串(たむけぐし)」が転じたものという説や、木の串に玉をつけた「玉串(たまぐし)」という呼び方が起源という説などがあります。いずれにせよ、神に対する敬意と祈りを込めた特別な捧げ物であることに変わりはありません。

また、玉串は神饌(しんせん)と呼ばれる食物のお供えと異なり、参列者自身が直接手に取り、心をこめて神前に供えるという特徴があります。つまり、玉串を通して参列者一人ひとりが自らの祈念を神に捧げるという意味合いを持っているのです。

 

さらに、玉串の捧げ方にも格式があり、神前に奉る際は、正しい作法に則って丁重に取り扱う必要があります。このように、玉串は単なる供え物ではなく、神様との心の通いを象徴する重要な存在であるといえるでしょう。

なお、地域によっては榊以外の木(杉やイチイなど)を用いたり、紙垂の代わりに木綿を用いたりする場合もありますが、その本質的な意味は共通しています。

 

玉串奉奠の作法

玉串奉奠には一連の作法があります。まず、自分の順番が来たら、喪主や遺族に軽く会釈をし、神職または係員から玉串を両手で受け取ります。受け取る際は、右手で玉串の根元を上から包み、左手で枝先を下から支えるように持つのが基本です。

その後、胸の高さで玉串を保ちながら、祭壇の前に進みます。玉串案(たまぐしあん)と呼ばれる台の前で立ち止まり、まず一礼します。次に、玉串を時計回りに90度回して縦にし、祈念します。この祈念の時間は長くなくても構いませんが、静かに心を整えて行います。

 

祈念が済んだら、玉串の根元を左手に持ち替え、時計回りに180度回転させて根元を祭壇に向ける形にします。両手で玉串を玉串案の上に丁寧に置いたら、二歩ほど下がり、姿勢を正して「二礼・二拍手・一礼」を行います。お葬式の場では拍手は「忍び手(しのびて)」といい、音を立てずに打つのが作法とされています。

最後にもう一度深く一礼をしてから、喪主や遺族に会釈し、自席へ戻ります。

作法には細かな所作が多いため、お葬式の場では事前に案内板や係員の説明をよく確認しておくと安心です。不安がある場合は、周囲の人の動きを参考にしながら行うと良いでしょう。

玉串料の相場

神式のお葬式に参列する際に持参する「玉串料(たまぐしりょう)」は、仏式での「香典」に相当するものです。

 

玉串料の金額は、参列者の立場や地域によって異なりますが、一般的な相場としては、知人や友人の場合で5,000円〜10,000円、近しい親族の場合で10,000円〜30,000円程度が目安とされています。会社関係では、故人の立場や関係性に応じて、10,000円〜20,000円が妥当とされるケースが多いようです。

 

玉串料を包む際には、「玉串料」「御玉串料」「御神前」などと表書きするのが一般的です。水引は白黒や双銀の結び切りを用い、のしは付けずに弔意を示す形が基本となります。表書きの下には、自分の名前をフルネームで記載しましょう。

 

また、玉串料を入れる不祝儀袋は文具店やコンビニでも手に入りますが、神式用として区別されているものを選ぶとより丁寧です。仏式とは異なる点があるため、事前に確認しておくとスムーズです。

 

なお、神社での祈祷やお札を受ける際に渡す謝礼は「初穂料(はつほりょう)」と呼ばれますが、お葬式に関しては「玉串料」が正しい表現になります。この違いを理解して使い分けることも、礼儀を重んじるうえでの重要なポイントとなります。

神道のお葬式で重要な役割を果たす「玉串奉奠」は、故人への敬意と神への祈りを込めて玉串を捧げる神聖な儀式です。玉串の意味を理解し、その作法を心得ておくことは、遺族や参列者の心をより丁寧に伝えるためにも欠かせません。初めて神式のお葬式に参列する場合でも、事前に知識を得ておけば、落ち着いて儀式に臨むことができるでしょう。

神道ならではの文化や習わしに触れる機会として、玉串奉奠は大変意義深いものです。形式にとらわれすぎず、心を込めて向き合う姿勢が何よりも大切だと言えるでしょう。

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