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大乗仏教の成り立ち

大乗仏教を語る上では、小乗仏教の存在が欠かせません。

大乗仏教は西暦紀元後頃に新しく興った部派で、それまでは小乗仏教の教えが仏教の基本的な考え方でした。

開祖であるゴータマ・シッタールダは悟りを開いた人として「釈迦牟尼」と呼ばれるようになりましたが、教えの基本が悟りを開くことにありました。

釈迦牟尼の死後、その教えは弟子たちによって受け継がれ広められて行きますが、伝統や決まり事を忠実に守ろうとする長老たちによる保守派と、それに対抗する革新派が生まれてきました。

やがて保守派による「小乗仏教」と革新派による「大乗仏教」に大きく分裂したあと、さらに幾度となく枝分かれを繰り返して多くの宗派が生まれ、今に至ります。

 

開祖の死後に部派に枝分かれしていくのは仏教に限ったことではなく、多くの宗教での共通点と言えるでしょう。また、開祖が亡くなるとその教えに様々な解釈が加えられて変容していくことも自然な流れかもしれません。

生前、仏陀のもとには多くの修行者が集まり、悟りを求めて厳しい修行を重ねました。しかし、だれもが悟りを開けるわけではなく、狭き門だったのです。また戒律もたいへん厳しく、広まった先の土地には馴染まない戒律も多くありました。

 

次第に不満や疑問を持つものが増えていき、「大乗」と言う新しい概念を作り上げていきました。

そもそも「大乗」「小乗」という言葉が初めからあったわけではなく、一切衆生の考え方に、のちに「大乗」という言葉がつけられ、その対極にある考え方として保守派が守る教えを大乗仏教側から「小乗」と呼ぶようになったのです。

最近ではこの「小乗仏教」という呼び方が誤った解釈を与えることから、「上座部仏教」と呼ばれるようになっています。

 

大乗仏教の教え

大乗仏教は、民衆を救うことを目的とした教えで、修行を必須としません。

その文字の表す通り、信じれば皆が救われるという、仏教を「大乗」、つまり1つの大きな乗り物に例えた教えです。

 

誰でも信仰を持ちさえすれば救済の大きな乗り物に乗り、仏となって浄土に渡ることが出来るというこの教えは、民衆のための仏教として厳しい現世を生きぬく人たちに多くの支持を得て、今日まで続いて来ました。

自らは救われなくてもまずは他人を救うという菩薩の精神をもつことが重要とされ、自よりも他という考えが色濃いのも特徴です。

 

大乗仏教が興る前は、救済を得るためには出家して厳しい修行を重ね、悟りを得なければならないとされていました。この救済観に「信仰すれば誰もが救われる」という解釈を加える形で発展してきたため、その教えには釈迦の教えとは別の解釈が加えられる形になっています。

しかしこの柔軟な解釈のおかげで、仏教は広く一般にも普及していったとされています。

大乗仏教の教えに基づいている日本の仏教

現在日本の仏教では主な十三宗派全てが大乗仏教の教えに基づいています。

これは飛鳥時代に初めて日本に伝来したのが大乗仏教であったことと、奈良・平安時代に盛んに仏教哲学を学びに渡った中国でも大乗仏教が主流であったことも理由の一つになっています。

 

同じ仏教でも、大乗仏教と小乗仏教では戒律の厳しさが違います。厳しい修行が必要な小乗仏教に比べると大乗仏教の戒律はそこまで厳しくはありません。

例えば小乗仏教の戒律である「五戒」を見ると、殺生を禁じていたり、飲酒はご法度だったりします。そのため同じ仏教国でも小乗仏教が信仰されている国では、動物を殺生して食することが禁じられていたり、屋外での飲酒が禁じられていたりするのです。

日本では、仏教徒でも出家をする人はごくわずかですが、ミャンマーなどのように大部分が出家を経験するのが一般的な国もあります。

 

最澄が定めた「単受大乗戒」

大乗仏教を基本とした十三宗派の中でも、天台宗の最澄が確立した「単受大乗戒」は日本の仏教の戒律に大きな影響を与えました。

仏陀が開いたインド仏教から伝わっているものに、「二百五十戒」(女性は三百四十八戒)があります。二百五十戒には二百五十の戒律があり、僧侶となるためにはこれら一つ一つに誓いを立てていく必要があります。これが仏陀の決めた決まりだと信じられていました。

しかし最澄は「単受大乗戒」で、二百五十の戒に誓いを立てることなく、大乗戒にのみ誓いを立てることで極楽浄土へ召されると説きました。大乗戒は二百五十戒に比べれば遥かに戒律が緩やかで、厳しい戒律に耐えられず下山する僧たちを留まらせるのにも非常に有効であったとされています。

大乗仏教は日本の他に中国、台湾、韓国、ベトナムなどの東アジア、また治部と、モンゴルなどの中央アジアを中心に信仰されています。

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