お葬式の豆知識
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火葬とは?由来と現在の火葬
日本では、遺体を火葬してから埋葬するのが一般的です。しかし古くには、土葬が主流でした。どのようにして、遺体を火葬することが主流となっていったのでしょうか。
ここでは、火葬の由来や日本での火葬の歴史についてご紹介します。
火葬のはじまり
世界の歴史の中で、遺体は様々な方法で埋葬されてきました。日本では馴染みの深い火葬を始めとして、土葬や水葬を行う場所もあり、その国や地域の土着の習慣がまざりあって、様々な埋葬方法が行われていました。
「死」に関する概念は宗教と密接にかかわっているため、遺体の埋葬方法には宗教色が色濃く現れています。
特に仏教では、教祖である釈迦牟尼の遺体を荼毘に付したことから、遺体を火葬することが一つの習慣となってきました。「荼毘に付す」というのは火葬を意味する言葉で、インドでは古くから遺体を火葬する習慣があり、釈迦牟尼の遺体もこれにならって火葬されたものだと考えられます。
仏教の教えでは、魂は肉体に宿るのではなく、肉体が滅びた後は輪廻転生するものと考えられています。
そのため、亡骸はこの世での役割を終えたものとして荼毘に付し、その灰をガンジス川に流して自然に戻すのが習慣となっていました。
一方で気温の高いインドでは遺体の腐敗の進行が早く、感染症の予防の面でも火葬を行っていたと考えられます。
これに対し、キリスト教やユダヤ教、イスラム教は火葬をタブー視し、土葬を行ってきました。これらの宗教では、死後の肉体はいつか復活すると考えられているためです。
このように、埋葬方法は宗教と切っても切り離せないものとなっています。
日本の火葬の歴史
日本は今でこそほとんどの埋葬が火葬で行われますが、歴史を振り返ると長い間土葬が主流でした。日本で火葬がはじまったのは、仏教の伝来と同じ時期です。歴史上の記録に残る火葬が最初に行われたのは、西暦700年に火葬された道昭がはじめとされています。道昭は飛鳥時代に唐に渡り、仏教の教えを授かって日本に法相宗を伝えた僧侶です。
道昭が自分の遺体を火葬するようにと遺言を残し、それにならった弟子たちが遺体を火葬して埋葬したとされています。またその2年後には、時の天皇であった持統天皇も火葬によって埋葬されたと記されています。
このように、仏教の伝来とともに火葬は少しずつ広がりを見せていきました。
しかし明治時代に入ると、一転して火葬が禁じられます。明治政府によって神仏分離令が出された後、明治政府の後押しによって勢いを増した神道派の主張を受け、明治6年に火葬禁止令が発令されました。
明治政府は天皇の神格化を狙って仏教を排斥しようとしたため、仏教の教えに基づく火葬も排斥の対象となったのです。
しかし火葬に比べて広いスペースが必要になる土葬は、現実的に場所の確保が難しく、政府内部からも火葬禁止令への反対意見が出るようになりました。こうして2年後の明治8年には火葬禁止令が廃止されるに至ったのです。
現在の火葬
火葬禁止令の廃止後、日本では急速に火葬が普及していきます。
その理由は、大きく二つありました。
一つは、日本が仏教国であるということです。日頃は仏教を信仰しているという意識がなくても、日本のお葬式は9割が仏式で行われます。仏教の教えにならえば、埋葬方法は火葬になるのが自然の流れです。
また二つ目は土地や衛生面、費用などの現実的な問題です。
国土の狭い日本では、土葬を行う際の墓地の確保が難しく、また土葬には感染症の拡大など、衛生面の問題があります。その上土葬は、火葬よりも費用がかかるのです。
それらを解決できる火葬の有用性が認められるようになり、徐々に火葬が選択されるようになっていったと考えられます。
現在は国の法律で火葬しなければならないと指定されているわけではありませんが、各自治体によって細かな規定が設けられています。この規定に乗っ取ると、実質的に土葬が難しく、また東京都や大阪府などの都心部では土葬が禁止されていることもあり、日本の埋葬は99%以上が火葬となっています。
詳しくは「日本ではなぜ火葬なのか?」「日本では土葬はできない?」でご紹介しています。
火葬施設の設備
火葬を行うためには、火葬場が必要です。遺体を火葬するためには専門の火葬炉が必要で、一般の焼却炉と違って遺体を一体ずつ火葬する設備になっています。
日本の火葬炉で多く使われているのは「台車式」と呼ばれるもので、人体の形のまま遺骨が残るように火葬するものです。古い炉では800~950°程度、最新型では900~1200°で火葬します。
温度が高すぎると骨まで灰になってしまうため、骨だけが綺麗に残る温度で火葬する仕組みになっています。また、火葬による有害なガスが出ないように配慮されています。詳しくは「火葬炉の仕組みとは」でご紹介していますので、参考にしてみて下さい。
火葬後の儀式
日本では火葬のあと、遺骨を骨壺に納める「骨上げ」の儀式があります。
骨上げとは、火葬を行った後に箸で遺骨を拾い、骨壺に納めることです。遺体の一体一体を人の形のまま、骨が残るように火葬する理由は、ここにあります。故人が三途の川を渡り、無事あの世へ渡れるように橋渡しをするという想いが込められています。但し、ひとえに「骨上げ」といっても、地域によって違いがあります。
詳しくは「骨上げとは」でご紹介していますので、参考にしてみて下さい。